離れた年齢のユーザー同士が同じ曲を歌っている
まず、仮に「共通して歌っている曲はあるけど、同じ年齢層のユーザー間でしか歌っていない場合」を想定してみましょう。するとこんな図になります。
ご覧のように、隣接した同じ年齢層内のユーザーに線が引かれる一方で、年齢の離れたユーザー間には線が引かれないため、真ん中がすっぽり空いたドーナツのようなコードダイアグラムになります。似たような人としか共通曲がない状態です。
では実際の歌唱データを使って描くと、どうなるでしょうか。
ご覧のように、ユーザー間の共通歌唱曲を示す線が、隣同士だけでつながらずに、縦横無尽に無数に走って中央部で交差しています。このことから離れた年齢層のユーザーの間でも、共通の曲が頻繁に歌われているということがわかります。
その中でも、他人との共通曲が多い(=円周部の円弧が長い)10代女性のユーザーに注目してみましょう。
例えばこちらの10代女性ユーザーの場合、共通歌唱曲を示す線が扇状に無数の方向に伸びています。つまり同年代はもちろん、すべての性年齢層のユーザーと、何らかの曲を共通して歌っているわけです。一体、誰と、どんな曲を共通して歌っているのでしょうか。
例えば10代男性のあるユーザーとは、秦基博さん「ひまわりの約束」(2014年)のような男性ボーカル曲や、Kanariaさん「KING」(2020年)のような女声ボカロ曲(ボカロ=「ボーカロイド」とはヤマハ株式会社が開発した歌声合成技術とその応用ソフトウェアのこと。それらを利用して作成した曲をボカロ曲という)など5曲を共通して歌っています。
また60代女性のあるユーザーとは、HoneyWorksさん「可愛くてごめん(feat.かぴ)」(2022年)、MONGOL800さん「小さな恋のうた」(2001年)、Adoさん「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」(2022年)の3曲を共通して歌っています。
「小さな恋のうた」は2001年リリースですので、10代の生活者は生まれていない時代の曲です。今の10代が歌うとすれば「渋い」という面はあるのかもしれませんが、例えばこの60代女性とはハモったりして一緒に盛り上がれる可能性がありそうです。
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