ルペンやメローニは中道にシフトしたが

 しかし、ルペンとメローニは反対方向にシフトしてきた。

 メローニはこれまで、権力を握ってから比較的普通の保守派のように見えた(もっともイタリア左派の多くは依然、メローニが隠れた思惑を抱いていることを大いに疑っている)。

 ルペンについて言えば、過去10年間の戦略全体が極右を「脱・悪魔化」させ、中道へシフトさせることだった。

 その目的のために、ルペンは自身の父親を党から追放することさえやり、最近ではドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」と決別した。

 では、これはRNが7月にフランスで権力の一部を握ったとしても我々は安心していられることを意味するのか。

 絶対に違う。

 ルペンの欧州政策の一部――例えばフランス法の優位を取り戻す策や欧州連合(EU)予算へのフランスの払い込みの停止――は経済的な混乱を引き起こし、EUの存続を脅かす。

 だが、こうした政策はまだ、民主的な枠組みのなかで正当に追求することができる。

 本当の危険が訪れるのは、危機の雰囲気がRNに緊急権限を求める口実を与え、ひいては権威主義に入り込む一線を越える場合だ。

 フランスの極右勢力のなかには、最近の記憶の中で悪意ある反民主的な考えに手を出した人が大勢いる。