パリに本部を置く国際NGO「国境なき記者団」(Reporters Sans Frontières、略称RSF)は、毎年、「世界報道自由度ランキング」を発表しているが、エジプトは世界180カ国中170位という最悪の状況で、イラク、ミャンマー、中国、北朝鮮、アフガニスタン等とほぼ同じレベルである。こういう国が「かかる言動を精査し、自国の法令に則り、適切な対応策を講じることを検討している」と言えば、身の危険を感じるのは当然だ。
告発者を批判すらしない小池氏の奇妙な態度
ところで気づいている人は多いと思うが、小池氏は、カイロでの同居人の北原百代氏、今回告発をした小島敏郎氏、あるいは都議会で学歴詐称疑惑追及の急先鋒である上田令子都議、この問題を追及している郷原信郎弁護士や筆者を名指しで批判したり、非難したりすることはない。去る4月19日の記者会見で小島氏の告発に関して訊かれたときも「こういうことがいつも選挙の前になると言われて困惑している」という評論家のような態度で、小島氏に言及することもほとんどなかった。
大学をきちんと卒業した人なら誰でも、卒業資格や卒業証書に言いがかりをつけられれば、怒り心頭に発し、「誰々の言っていることはまったくの出鱈目で、自分はこれこれこのように勉強し、学業実態に関する様々な証拠もある。真実を明らかにするため、名誉毀損にもとづく損害賠償請求を提起する!」という反応をするだろう。筆者自身も当然そのようにする。
小池氏がなぜこういう当たり前の反応をしないかと言うと、相手を名指しで批判し、逆に名誉毀損などの訴訟を起こされるのを恐れているからだろう。小池氏は間違いなく弁護士からアドバイスを受けており、学歴詐称問題が法廷に出た場合、負ける可能性が高いことを認識している。そのため相手を刺激しないよう、注意深く言葉を選んでいる。このことを知らなかった人は、今後、小池氏の物の言い方に注目すると、心の内が透けて見えて面白いはずだ。
先月筆者が発表した「告発者たちとカイロ大学の言い分は、なぜ真っ向から食い違うのか?」という記事に書いた通り、小池氏に学業実態がないという証言や証拠は山ほどある。小池氏はろくな反論や説明もせず、「卒業証書もある。カイロ大学も卒業を認めている」で逃げ切ろうとしている。しかし、カイロ大学が「小池氏は1972年に入学し、1976年に卒業した」と言っていること自体が、小池氏の著書『振り袖、ピラミッドを登る』や『外国語をどう学んだか』(講談社現代新書、1992年刊)で「1年目に落第して進級できなかった」という小池氏自身の記述と矛盾しており、杜撰な嘘としか言いようがない。小池氏の学歴詐称疑惑は、もはや法廷に出るまでもなく、「クロ」と断定すべき時期であると考える。