ジャーナリストへの弾圧が日常茶飯事の軍事独裁国家
一般の日本人が抱くエジプトのイメージは、ピラミッド、スフィンクス、ナイル川、スエズ運河など、観光関連が中心だろう。しかし同国は、2013年にクーデターで政権を奪取した軍が支配する国で、現実はまったく異なる。
ジャーナリストに対する弾圧は日常茶飯事で、米国務省は2020年の国別人権報告書で、「違法または恣意的な殺害」「強制失踪」「政府による拷問」「過酷で生命を脅かす刑務所状況」「ジャーナリストの逮捕または起訴」といった状況の存在を指摘している。2021年のロイターの報道によると、ジャーナリストの投獄が最も多い国は中国(50人)で、次がミャンマー(26人)、3番目がエジプト(25人)である。
外国人でも容赦なく拘束し、拷問も
エジプト政府は、自分たちの気に食わない報道をしたジャーナリストを反テロ法などで恣意的に逮捕し、投獄・起訴している。今年1月には、カタールの衛星テレビ局アルジャジーラに所属するオーストラリア人1人、英国人2人、オランダ人1人、エジプト人16人の合計20人の記者を、エジプトが内戦状態にあるかのような虚偽のニュースを報道したとして拘束し、起訴した。
エジプト政府のジャーナリストに対する弾圧は、筆者が住む英国でも常に肌で実感される。教会などには、治安機関に拘束され、拷問を受けたエジプト人女性ジャーナリストの解放を訴えるアムネスティ・インターナショナルのチラシが置かれていたりする。
2021年4月には日刊の「METRO」紙が、エジプトの政治問題の調査をしていたケンブリッジ大学のイタリア人大学院生が、拷問の上、殺害された事件に関し、イタリアの弁護士がエジプトの治安機関に所属する4人を裁判にかけるよう求めたと報じた。