「新証拠を審査してほしいなら、申請を取り下げてから自賠責に異議申立せよ」

柳原 では、紛争処理機構による「めちゃくちゃ」な運用とは、具体的にどのようなものだったのでしょうか?

青野渉弁護士

青野 私が委任されたケースのひとつですが、交通事故で後遺障害を負ったAさんが、自賠責で判断された低い等級認定に納得できず、新たな証拠としてCT等の画像や医師の診断書を紛争処理機構に提出しようとしたところ、機構の担当者が、「ウチは、自賠責保険の判断の当否を審査するだけの仕事しかしていません。だから、新しい証拠は審査の対象となりません。新しい証拠を審査してほしいなら、ウチへの申請は取り下げて、再度、自賠責保険に異議申立をしてください」と取り下げを勧告したのです。

柳原 門前払いですか? 新しい証拠を受け付けなければ、そもそも再審査などできませんよね。

青野 交通事故で後遺障害を負った被害者は、皆さん大変苦しんでいて、誰もが早急に自賠責保険から適正な認定をしてもらいたいと望んでいます。

 特に、紛争処理機構に申請している方々は、すでに自賠責への請求という第一段階で「後遺障害」を否定され、さらに異議申立によっても再度否定されているため、経済的にも、精神的にも、非常に困窮しておられます。一刻も早く公正中立な第三者機関で審査してもらいたいと思って、できるだけの証拠を集めて準備し、藁にもすがる思いで紛争処理機構に申請をした人たちです。

 そういう人たちに対し、「新証拠は審査しない。審査して欲しいなら取り下げて、異議申立から出直してこい」と言うのですからひどいものです。