日本時間の6月15日早朝から、サッカーのUEFA欧州選手権(EURO 2024)が開幕する。2026年のFIFAワールドカップ(W杯)でベスト8以上を目指す日本代表とすれば、ライバルとなる欧州の強豪国の戦いぶりが気になるところだ。中でも注目されるのが、EURO 2024開催国のドイツ。低迷が続くドイツ代表は、W杯カタール大会と強化試合で日本代表に連敗した後、監督交代に追い込まれた。しかし、今年に入って4試合は負け知らずの状態で大会入りする。欧州選手権で古豪復活となるのか。
(森田 聡子:フリーライター・編集者)
スター軍団で“レアルの心臓”と称されるクロース
EURO 2024でのドイツ代表復活の鍵を握るのは、2人のベテランだ。
1人はミッドフィルダー(MF)のトニ・クロース。34歳のクロースにとってはEURO 2024が現役最後のゲームとなる。直近10年間はスペインリーグのレアル・マドリードでプレー。高度な戦術性と正確無比なパスで欧州屈指のスター軍団の中盤に君臨し、“レアルの心臓”と称された。
6月1日に行われたUEFAチャンピオンズリーグ決勝ボルシア・ドルトムント戦では、ディフェンダー(DF)ダニエル・カルバハルの決勝ゴールをお膳立てするなど、レアル・マドリードに史上最多となる通算15回目の栄冠をもたらし有終の美を飾っている。
34歳とはいえ全く年齢的な衰えを感じさせないだけに、その引退を惜しむ声は多い。レアル・マドリードのフロレンティーノ・ペレス会長は皮肉を交えてこんなコメントを寄せている。
「我々は彼に契約更新を申し出たが、彼は全盛期に引退したいという明確な考えを持っていた。ドイツ人の気質は知っているだろ? 彼らが一度決めたことを覆すのは難しいんだ。彼は“伝説の選手”として去っていく」
EURO2020の後「クラブに集中したい」とドイツ代表を離れたクロースに復帰を促したのは、代表の新監督ユリアン・ナーゲルスマンだ。以前の記事で「ラップトップ世代の監督」として紹介したナーゲルスマンは現在36歳。戦術の引き出しが豊富で、時に周囲をあっと言わせる奇策を繰り出すことがある。