揺らぐフォンデアライエン委員長の立場

 今回の欧州議会選を受けて、今後EUでは、執行部局である欧州委員会の運営体制が刷新される。

 続投を目指すウルズラ・フォンデアライエン現欧州委員長だが、そもそも同委員長の就任は、マクロン大統領の強い意向を反映したものだった。いわばマクロン大統領は、フォンデアライエン委員長の「生みの親」であり、また「庇護者」でもあった。

 産業界に近い中道右派の会派(EPP)に属しているにもかかわらず、フォンデアライエン委員長が欧州グリーンディールに代表される環境対策を推進できた大きな理由の一つに、マクロン大統領との関係の良好さがあったと考えられる。

 現状の議席配分を考慮すれば、欧州委員会の次期執行部でもフォンデアライエン氏が委員長に再任される可能性が高い。一方で、マクロン大統領の求心力の低下を受けて、フォンデアライエン委員長の求心力もまた低下すると予想される。特に、フォンデアライエン氏が注力してきた環境対策については、見直しが進むことになるだろう。

 例えば、欧州委員会は2035年までに新車登録を電気自動車(EV)など走行時に温室効果ガスを排出しないゼロエミッション車(ZEV)に限定する方針や、2030年までにエネルギー供給に占める再エネの割合を42.5%に引き上げる方針を決定したが、こうした政策について、中間目標の下方修正や最終期限の延長が図られると予想される。

 確かにフォンデアライエン委員長には、その強いリーダーシップで、2020年のコロナショックと2022年のロシアショックを乗り越えてきた実績がある。ただ、その強いリーダーシップは、同時に独善的とも評されてきた。マクロン大統領という庇護者の求心力が低下する中で、フォンデアライエン委員長の資質が改めて問われることになる。