証券投資と対照的だった直接投資の収益率
しかし、成長率という点について言えば、人口減少を常とする日本は諸外国に劣後する状況が金融危機後も続いた。
こうした状況下、2008~12年の超円高地合いも相まって、日本企業にとっては現地生産・現地販売を主軸とする戦い方が合理的な環境が整っていった。縮小する国内市場ではなく拡大する海外市場に賭けるという当然の発想である。
証券投資同様、過去20年間における直接投資の収益率の動きを見てみると、基本的に多くの国・地域で改善傾向が確認できる(図表③)。
【図表③】
とりわけ中国を中心とするアジアで高めの収益率が期待できる中、日本企業が低金利の常態化する証券投資よりも直接投資を選んだのは必然であろう。
こうして内外の経済・金融情勢に背中を押されたことで日本から海外への直接投資は順当に増え続け、今も毎年、相応の買い越しが続く情勢にある。それが積み重なって「対外純資産の半分が直接投資」という構図に至り、「戻らぬ円」という議論に繋がっていく。この点は前回のコラムで詳しく議論したところだ。
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しかし、問題は今後である。