「大過なきこと」がキャリアアップの大前提

 さて、よろず「無謬原則」の組織は、裁判所であれ検察であれ、あるいは大学ですらそうですが、あれこれ「問題がある」と言われないことが、昇進のポイント。

 万事、事なかれ主義でトップは責任を取ろうとしないといわれます。

 鹿児島県警も同様で、捜査に必要な県警本部長の印鑑を、中央から派遣されてきた「お公家さま」キャリア官僚の野川本部長が捺そうとしない。

 野川氏52歳は愛知県出身、東京大学法学部卒で、東京オリンピック2020の警備など、地道な地方の犯罪捜査とは別の畑で生きてきた。

 完全に外様の野川氏が、何でも独断専行で決めていたわけです。

 よろず事なかれ主義であれば出世から落ちこぼれにくい現在の官僚機構。野川氏としては「一人でも処分者数を増やしたくない」わけです。

 ここで一つ資料を参照してみます。

国家公安委員会「令和5年中の懲戒処分者数について」

 冒頭に掲げた統計のように、鹿児島県警は令和5年度に関して、全国ワースト14位の「現職警察官懲戒処分数」になっていました。

 ところが、ここでたった一人、処分者を増やすだけで、広島、長崎、熊本、沖縄と並んで「ベストテン」にランキング入りしてしまう。

 こんなちょっとした点に、こうしたキャリア案件に触れて長い私は、つい目が留まってしまいました。

 これを九州地方8県で見ると、もっと露骨なことになっていました。

 現状の6人であれば、九州・沖縄8県の中で鹿児島はワースト5、たいして目立ちません。

 しかし、たった一人増えただけで、全国「ベスト5」の県第1位、福岡に次いで九州地方ワースト2に踊り出てしまう。

 全国で見ても「ベスト10」入り、晴れて「日本列島規模で見て10本の指に入る、統制のとれていない県警」の本部長として、野川氏も名乗りを上げることができることになります。