去る5月22日、結審を迎えた「袴田事件」再審で、性懲りもなく死刑求刑を繰り返さざるを得なかった検察の「無謬神話信奉」体質を本連載でも指摘しました。
しかし、まさにその「組織無謬の建て前」に加え、様々な曲解、手心を加えるなどして捜査を捻じ曲げ、あるいは善意の公益通報を法令違反のように言いつくろうかとも見られる、ある意味典型的な事件が、鹿児島県(警)で、現在進行形で起きています。
その背景を検討する前に、上のグラフを見ておいてください。
令和5年度の全国県警、懲戒処分者数をワースト1の愛知県警(21人)から並べると、以下大阪と千葉が同率2位、警視庁=東京が4位、福岡が5位と続き、ワースト10に広島・長崎・熊本・沖縄の4県が並びます。
今回注目する鹿児島県警は14位なのですが、あと1人、処分者が増えると・・・。おや、ワースト10に横並びしてしまいますね。
あくまで傍証に過ぎませんが、統計を見ていて気付いたことを最初に記しておきたいと思います。
今現在、鹿児島県警で観察される事態のあらましを見てみましょう。
地元で勤め上げた叩き上げOBの告発
5月30日、定年退職直後の男性が突如として逮捕されました。
容疑者は「本田尚志」氏(60)。今年3月末日まで長年、鹿児島県警に奉職し、ノンキャリアとしては上がりポストというべき「鹿児島県警生活安全部長」まで勤め上げた大ベテランの、警察OBです。
その人物が、古巣であるはずの警察に逮捕された。
容疑は「国家公務員法(守秘義務)違反」だというのですが、その実態は?
容疑者である本田氏は、裁判所で以下のように語っています。
「(自身が)流出させた情報は、現職警察官の不祥事をまとめた資料」であり、「鹿児島県警の野川明輝本部長(52)が、その隠蔽を図った」
その事実への抗議の告発だったそうです。
さて、仮にこの主張が真実であった場合、まずこの時点で警察の対処に問題を指摘しなくてはなりません。
というのも、この内容は明らかに公益通報と判断され、公益通報者保護法を参照するなら、通報者は厳密に保護されねばならないからです。同法第五条には次のように書かれています。