20年ぶりの最凶黒点群「NOAA13664」

 2024年5月10日のオーロラの元となったのは、「NOAA13664」という黒点群が5月8日から9日にかけて起こした3発の太陽フレアとコロナ質量放出です。「NOAA」は「米国海洋大気局(National Oceanic and Atmospheric Administration)」の略です。

2024年5月9日14時の黒点群NOAA13664(右下)。X2クラスのフレアを放った直後の姿。2024年5月9日14時の黒点群NOAA13664(右下)。X2クラスのフレアを放った直後の姿。(提供:National Solar Observatory)

 このNOAA13664という黒点群は、「Xクラス」と呼ばれる最大級のフレアを連続して放った「フレア砲」です。5月10日のオーロラを引き起こした後も、5月14日にはX8.7という特大のフレアを撃ちました(が、幸いにも地球を外しました)。

 フレアはX線の明るさでA、B、C、M、Xという5個のクラスに分類されます。AクラスのA1フレアの明るさは1×10^-8 W/m^2で、クラスが上がるごとに明るさは10倍になります。XクラスはAクラスの1万倍の明るさです。

 5月14日のX8.7フレアの明るさは実に8.7×10^-4 W/m^2、A1フレアのほぼ10万倍で、分類からはみ出しそうです。20年間で2番目の明るさという凶悪なフレアでした。

 NOAA13664は、大小二十数発のフレアをぶっ放した後、太陽の裏側に回って地球からは見えなくなりました。太陽は約30日周期で自転しているので、やがて見えるところに戻ってきます。

 NOAA13664が再び現れるまでに、勢力が弱まっているか、あるいは消滅していればいいのですが、原稿執筆時点ではまだ活動が活発で、太陽の裏側で虚空に向けて盛んにフレアを撃っているようです。もしかしたら強い勢力を保ったまま帰ってくるかもしれません。