負けるはずがない補選でまさかの敗退
そして肝心の和歌山1区の補選(23年4月23日投開票)だが、候補者選定で自民党県連はまたも揺れた。
大手新聞の政治部デスクが解説する。
「率直に言えば、補選に立候補をさせるタマが不足してしまいました。二階派の鶴保庸介参院議員と、同じく二階派の門博文・元衆議院議員の名前が浮上しましたが、結局、門氏が出馬することになりました。これが大きな誤算でした。
門氏は過去に3期、衆院議員を務めていますが、いずれも比例当選で選挙には弱い。また週刊誌に同僚国会議員との“路チュー写真”を撮られたこともあり女性有権者に人気がないのです。
それでも、主な対抗馬は維新公認で市会議員を辞めて立候補した林祐美氏だったため、『さすがに負けることはないだろう』と見られていたのですが、これが見事に負けてしまったのです」
林氏が6万1720票、そして門氏は5万5657票であった。林氏は市会議員選も補選で当選した人物で、政治家としての実績はゼロに近い状態であったにもかかわらず、「アンチ門」ムードにも後押しされて当選を果たした。
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一方、自民党にとってはこの補選で敗れたことで、次期総選挙における1区の候補者選定がさらに難しくなった。
理由の一つは、政治経験が豊富とは言い難い林氏の評判が予想以上にいいことだ。
林氏は国会議員となった現在、仕事をそつなくこなしていると好印象を持つ有権者が増えている。国会中継では維新の会の馬場伸幸代表の隣でサポートする様子も映し出され、清潔で清楚な印象は和歌山市民に好評という。
自民党の県議が言う。
「林さんの夫は和歌山県議会議員の隆一さんで、維新の会から離党勧告を受け入れたことで知られる人物です。奥さんは維新所属の国会議員、夫は維新を離れた県会議員という関係ですが、それがマイナスイメージには働いていません。夫婦仲はいいようですし、仕事をしながら3人の子どもを育てているのも夫妻にとってプラスのイメージです。選挙は二期目が一番強いとされていますから、自民党が和歌山1区で佑美さんから議席を奪うのは相当厳しいと思われます」
県連では一度は鶴保参院議員を引っ張り出そうとしたが、これは前述のように鶴保氏に「自分がくら替えしてしまうと和歌山県選出の参議院議員がいなくなる」と固辞されている。
そうなると二階元幹事長としては、三男・伸康氏の和歌山新2区での議席確保だけは絶対に譲れないところ。そこで心配なのが、自民党を離党した世耕氏の動向だ。
「二階氏としては衆院くら替えをうかがっているとされる世耕氏には1区から出馬してもらい、すみ分けを図りたいとの思いもある。ただ世耕氏がこのアイデアに乗るとは思えません。今回、2区になることになった新宮市は、近畿大学初代総長で衆院議員を務めた祖父・弘一氏以来の世耕家の地盤です。また“近大マグロ”で有名な近畿大学の養殖施設も南紀に集中しています。ですから『二階の三男との選挙戦のほうが勝算アリ』と判断すれば世耕氏は1区には見向きもしないでしょう。今のところ世耕氏がどのように動くのかは分かりませんが」(自民党県議)
もしも「1区選出の議員が林氏、2区選出の議員が世耕氏」ということになれば、二階氏側にとってこんな悪夢はない。2区の地盤は何が何でも死守したいところだろう。
もっとも二階氏本人について、「体調がすぐれず、都内の病院に入院した」とか「ICUに入っていたこともあった」などといった情報も盛んに流れている。健康問題も気になるところだ。
6月解散の可能性は一応消えたと見られているが、まさに一寸先は闇。和歌山政界の混乱はまだ続く。