「戦争の枢軸」との新冷戦が始まった

 そもそも気候変動が国際的な「問題」に格上げされたのは、リオデジャネイロで開催された「地球サミット」で気候変動枠組み条約が合意された1992年ごろからである。

 これが1991年のソ連崩壊の翌年であることは偶然ではない。

 冷戦の間は米ソで協力するということ自体が不可能だった。冷戦が共産主義の敗北に終わり、これからの世界は平和になり、全ての国が民主主義国として協力してゆく、というユートピア的な高揚感が生まれた。そのような状況で、世界全体での協力による、地球規模の問題の解決という機運が生まれたのだ。

 これは当初から幻想に過ぎなかったのだが、2022年にロシアがウクライナに侵攻したことで、ポスト冷戦期の国際平和なるものは完全に終焉した。

 そしていま、ロシアはイラン製のドローンを輸入し、北朝鮮から弾薬を購入している。中国との間では石油を輸出して戦費を調達し、工業製品を輸入している。

 かくしてロシア、イラン、北朝鮮、中国からなる「戦争の枢軸」が形成され、NATOやG7はこれと対峙することになった。ウクライナと中東では戦争が勃発し、日本周辺においては台湾有事のリスクも高まっている。

 この状況に及んで、自国経済の身銭を切って、高くつく脱炭素のために国際協力することなど、ありえない。戦費の必要なロシアや、テロを支援するイラン、米国に対抗して軍事力を増強する中国が、敵が支配している世界全体の幸福のためとして、自ら豊富に有する石炭、石油、ガスの使用を止めるなど、ありえない。

 ごく近い将来、気候変動はもはや国際的な「問題」ですらなくなるだろう。