財務大臣と日銀の役割は?

 為替介入は「外国為替市場介入」を略した言葉で、正式には「外国為替平衡操作」といいます。“平衡操作”という用語の通り、「相場を安定させるため、通貨当局が外国為替市場で通貨を売買する行為」のこと。日本の場合、米国が最大の貿易相手国であり、かつ、ドルは世界の基軸通貨ですから、売買の対象は「円↔︎ドル」が一般的です。この中には円高を抑える「ドル買い・円売り」と、円安を抑える「ドル売り・円買い」の2種類があります。

 では、誰が為替介入を決め、どのように実行されるのでしょうか。

 日本では、為替介入の決定権は財務大臣にあります。その根拠は、外国為替や貿易などの対外取引について定めた法律「外国為替及び外国貿易法(外為法)」。その第7条3項は「財務大臣は、対外支払手段の売買等所要の措置を講ずることにより、本邦通貨の外国為替相場の安定に努めるものとする」と定めています。

 一方、介入の実務を担うのは日本銀行です。財務大臣の指示に基づき、日銀は「財務大臣の代理人」として通貨を売買します。元手(原資)となるのは、財務省が為替介入のために準備している「外国為替資金特別会計(外為特会)」です。

 例えば、急激な円安を抑えるために「ドル売り・円買い」で介入するとしましょう。まずは「売却するドル」の調達が必要です。外為特会が保有する資産のうち、ドル建て預金はそのまま介入の資金として使えますが、米国債券などはいったん市場で売却し、ドルで現金化します。そうして調達したドルを売り、円を買う。これが為替介入です。

 円高/円安は為替市場における円の相対的な価値で決まります。したがって、日銀によるドル売り・円買いの介入は「円の需要が増えた」ことと同義で、ドルを基準にすると円の価値が上がり、円高・ドル安方向に動くわけです。

 異なる通貨の交換(売買)は外国企業との取引(決済)や旅行者らに必要なもので、もともとは実体経済と表裏一体の関係でした。ただ、グローバル化の進展に伴い国際的な規模での通貨交換が瞬時に実行できるようになってきたことから、相場の上下を利用した投機的な資金も大量に外国為替市場に流れ込んでいます。

 ちなみに、当局が介入を秘密裏に実施することを「覆面介入」と呼びます。介入の是非を公言しないことで、投機的な資金を扱う市場のプレイヤーに「いつ介入されるか分からない」という疑念を抱かせ、一方的な取引を控えさせる狙いがあります。