TYPE RはEV、FCEVとどう絡む?

 自動車産業ではその創成期である1900年代前半から、世界各地でレースが開催されてきた。日本では1962年、三重県の鈴鹿サーキットが開業したことが大きなきっかけとなり、「クルマ=社会の最先端」というイメージが日本市場に広がっていき、サーキットを疾走するスポーツカーは若者の憧れの的になった。

 だが、70年代には排気ガス対応の技術開発やオイルショックなどの影響で、自動車メーカー各社が本社直轄のモータースポーツ活動を縮小する。

「Honda R&D Challenge FL5」の車内(写真:筆者撮影)

 80年代以降も、排気ガス規制や衝突安全規制などが強化される中、クルマはライフスタイルとしてのファッション性が重視されるようになる。

 そうした中、ホンダのF1、三菱自動車のパリ・ダカールラリーや世界ラリー選手権(WRC)、スバルのWRC、マツダのルマン24時間など、世界的なモータースポーツがメーカー各社のブランド戦略に組み込まれるようになっていく。

 こうしたモータースポーツとスポーティブランドの変遷を振り返ると、近年のホンダの場合、TYPE Rがひとり歩きし、量産車向けのスポーティブランド戦略の軸足を明確にできていないように映る。背景には、二輪車と四輪車の両方で幅広いモータースポーツ活動を行っていることや、2026年から正式に復帰するF1の存在価値が大きくなっていることなどもあるだろう。

 2040年にグローバルで販売する四輪車の100%をEVまたはFCEV(燃料電池車)とする目標を掲げているホンダ。次世代TYPE Rを含む、スポーティブランド戦略の次の展開について注意深く見守っていきたい。

桃田 健史(ももた・けんじ)
日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなどのレースにレーサーとしても参戦。ビジネス誌や自動車雑誌での執筆のほか、テレビでレース中継番組の解説なども務める。著書に『エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?』『グーグル、アップルが自動車産業を乗っとる日』など。
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