長崎と和歌山の総支部トップは同じ人物

 実は維新の会の長崎県と和歌山県の総支部の代表は同じ人物が務めている。一般的には維新の会の国会議員が総支部代表になるのが恒例となっているが、当時は長崎・和歌山ともに国会議員がいなかった。そのため大阪1区選出の衆院議員・井上英孝氏がその座を任されていたという。井上議員が総支部代表を務める長崎と和歌山から相次いで離党者が出たということになる。

 長崎・和歌山両県で維新の会を離れた議員たちからは、井上議員に対する不満の声が上がっている。

 前回記事で触れた、長崎市で離反した梅本圭介市議が言う。

「これは総支部代表である井上さんの統治能力の問題と言えます。意見をくみ上げることをせず、『文句を言う奴は切れ』とばかりの処分ですから、党に対して意見を言う者は出なくなります。和歌山でも同じようなことをしていたと聞いて、維新の会に将来はないと感じています。ケチの付き始めはなんといっても万博開催ではないでしょうか。最初の予算を遥かに超える予算を計上して批判を浴びましたが、維新の会が先頭を切って誘致を成功させたのに、今では万博誘致の実績について口をつぐんでいる有様です」

大阪・関西万博のシンボルである、建設中の木製の大屋根「リング」を上空から望む=4月13日撮影(写真:共同通信社)

 和歌山の林県議もこう語る。

「昨年春すぎごろから万博予算が膨れ上がっていることやパビリオン建設に遅れが出ていることが報道されはじめました。春の統一地方選までは『万博は維新が誘致してきました』と選挙戦で強調していたのに、ネガティブな報道が出て来てからは会の内部でも万博に関する会話が一切出なくなっていました。なぜこのような状況になってしまったのかの議論は一切なく、あえて触れないような雰囲気を作ったのは執行部の責任ですし、総支部代表を任されている井上さんの統治能力にも疑問があります。

 健全な議論があるから良い政治ができるはずなのに『臭い物には蓋』的な運営をしているのは情けないし、私としてはこのような言論統制をする状態の維新の会から離れて気分的にはさっぱりとしていますが、妻には国会議員として頑張って欲しいという気持ちは変わっていません。3人の子供がおりますが、国会中は東京で暮らしているので私が世話を引き受けていますし、妻の母親も毎週のように京都から来てくれて世話を手伝ってくれています。大変ですが有権者のために良い政治を行う目標に向けて頑張るつもりです」

 4月28日に行われた東京・島根・長崎の衆議院補選で、「叩き潰す」はずだった立憲民主党に惨敗した日本維新の会。選挙で勝つためには強力な地方組織が必要なのに、肝心の地方議員がボロボロと党を離れていくような状況のままでは党勢拡大は望むべくもない。