自動車工場のライン。トヨタ工業学園を卒業した三浦は高岡工場で働き始めた(写真:つのだよしお/アフロ)

「Choose Your Life」を旗印に10代、20代向けのキャリア支援を展開しているハッシャダイソーシャル。設立当初は、代表理事を務める勝山恵一と三浦宗一郎が体一つで全国の学校や施設を回っていたが、最近では社会課題に関心を持つ同世代の仲間や教育現場の教職員、そして二人に影響を受けた10代、20代の若者がその輪に加わるなど、その活動は大きなうねりになりつつある。

 なぜ人々は二人の下に集まるのか。なぜ10代、20代の若者は彼らの言葉に耳を傾けるのか──。札付きの不良と自動車工場の元工員、その仲間たちが巻き起こしている「挑戦」の記録(第5話)。

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「この仕事って、楽しい仕事ですか?」

 トヨタ工業学園での3年間を終えた三浦宗一郎は、2014年にトヨタの正社員になり、正式に高岡工場で働き始めた。

 もっとも、実際にフルタイムで働き始めると、すぐに精神的にしんどい状況になった。工場でのライン勤務は毎日同じ作業の繰り返し。なかなかとれない夜勤や残業の疲れもあり、変わらない日常に嫌気が差したのだ。

 だが、当時の三浦はあくまでも自動車工場の歯車の一つ。彼自身にできることはほとんどなかった。

僕たちは、自分の人生を選択できているのだろうか。そもそも、僕たちの人生には選択肢があるのだろうか──。勝山恵一と三浦宗一郎が社会に投じた波紋は、さまざまな人を巻き込みながら、うねりになりつつある。『人生は選べる 「ハッシャダイソーシャル」1500日の記録

 そうして数カ月が過ぎ、ルーティンとなってつまらないとさえ感じなくなったある日、三浦の価値観を変える出会いが訪れた。期間従業員として3カ月、働きに来た「門口さん」との出会いである。

「門口と申します!沖縄から来ました!よろしくお願いします!!」

 周囲がビックリするような挨拶をした後、門口さんはニコニコしながらラインの組み立て作業を始めた。同じ仕事をしているのに、なぜこの人はこんなに楽しそうに仕事をしているのだろう──。驚いた三浦は、仕事の終わりの門口さんを捕まえてご飯に誘った。

 ここで立ち止まらず、飛び込んでいくところが三浦の真骨頂。その姿勢が、彼の人生を大きく変えていくのだが、それはまだ先の話。

 そして、深夜にファミレスに行くと、三浦は門口さんに尋ねた。

「この仕事って、楽しい仕事ですか?」

 すると、門口さんは少し考えて答えた。

「この仕事が楽しいかどうかは僕にはわからないけど、どうせやるならぜんぶを楽しくやりたいと思っているんですよね」