「Choose Your Life」を旗印に10代、20代向けのキャリア支援を展開しているハッシャダイソーシャル。設立当初は、代表理事を務める勝山恵一と三浦宗一郎が体一つで全国の学校や施設を回っていたが、最近では社会課題に関心を持つ同世代の仲間や教育現場の教職員、そして二人に影響を受けた10代、20代の若者がその輪に加わるなど、その活動は大きなうねりになりつつある。
なぜ人々は二人の下に集まるのか。なぜ10代、20代の若者は彼らの言葉に耳を傾けるのか──。札付きの不良だった男と自動車工場の元工員、その仲間たちが巻き起こしている「挑戦」の記録(第2話)。
周囲の大人がロールモデルにならない現実
勝山恵一は京都で生まれ育った。彼の地元は貧困層の多いエリアで、小学校の頃の友達は、その多くが母子家庭か、児童養護施設の子どもだった。勝山自身も、幼い頃に両親が離婚している。
環境がすべてではないが、所属しているコミュニティが子どもに与える影響は大きい。小学生だった勝山の周囲には特攻服を着た暴走族のメンバーや、バイクの窃盗に手を染める10代の若者が大勢いた。
そんな先輩に憧れた勝山も、中学生になると同じようにタバコを吸い、盗んだバイクを乗り回した。「それが、かっこいいことだと思っていた」。そう勝山は振り返る。
暴力も身近にあった。小学校の頃、学校に眼帯をして来た友人がいた。理由を聞くと、父親に殴られて目がつぶれたという。仲がよかった児童養護施設の友人も、京都の施設まではるばる来たのは父親に包丁で刺されたからだった。
いま振り返れば、明らかに異常である。だが、そんな日常が当たり前だと思っていた。
勝山が暮らしていた地域には、夢も希望もなく、人生を半ばあきらめているような大人が大勢いた。何かに挑戦しようとする人間に対して、「どうせ失敗するからやめとけ」「そんなんしても、ろくなことがないから遊んどけ」と言って何もしない大人である。
ロールモデルとなるべき大人がロールモデルにならない現実。その泥濘に、勝山自身もどっぷりと浸かっていた。
ただ、そんな勝山にも夢はあった。プロ野球選手になるという夢である。