毎年1兆円処分すると70年かかる

 一方、日本はそのような世界的サイクルから大幅に遅れながら、ようやく金融の「緩和」から「引き締め」に転じようとしています。その過程では、日銀が保有するETFの行方が問題になってきます。

 ETF購入額が劇的に減った2021年以降も株式市場が順調に伸びたことからすれば、購入終了によって市場や景気動向に直ちに問題が生じることはないでしょう。ただ保有額が莫大なだけに、ETFを処分する段階になって売り急げば、株式市場は暴落に見舞われかねません。

 ETFの今後の取り扱いについて、植田総裁は「ある程度、時間をかけて検討したい」「考える時間的余裕がある」と具体的な処分方法に言及していません。現時点で巨額の含み益が生じていることも「時間的余裕」の背景にあるようです。

 保有額が莫大なため、単純計算で毎年1兆円分ずつ売却しても70年以上かかることになります。巨額ETFの行方は「今日か明日か」という切羽詰まったものではありませんが、中長期にわたって注目を集めそうです。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。