3月18〜19日に開かれた金融政策決定会合で日本銀行は、マイナス金利の解除をはじめ、これまでの金融政策を大きく転換した。これにより日本も「金利のある世界」に戻ることになったが、今後の金融政策の論点をどう見ればいいのか。元日銀の神津多可思・日本証券アナリスト協会専務理事が、今回の決定と今後のポイントを解説する。(JBpress編集部)
(神津 多可思:日本証券アナリスト協会専務理事)
金融政策の「正常化」は日本経済が正常化してこそのもの
日本銀行が大きな政策変更を行った。マイナス金利、イールドカーブ・コントロールを止め、オーバーシュート型コミットメント*もその役割を終えたとした。かつてのように、政策金利を無担保コールレート・オーバーナイト物として、それを0~0.1%程度で推移するよう促すという金融市場調節方針が示された。
*消費者物価上昇率が安定的に物価目標を超えるまで通貨供給量の拡大を継続すること
このほか、所要準備額相当部分を除く日本銀行当座預金に0.1%の付利金利が適用され、ETF(上場投資信託)とJ-REIT(国内不動産投資信託)の新規買い入れは終了、CP(コマーシャルペーパー)・社債等については買い入れ額の段階的減額が決められた。
後段に関連する論点については、また改めて考えることとして、今回は前段のようないわゆる「正常化」の動きが今後どうなっていくかについて考えたい。
マイナス金利の解除が日本銀行の悲願だったという報道も散見されたが、特定の政策決定が日本経済の実情から切り離されて組織としての日本銀行の悲願になることはあり得ないと思う。それは建前だろうとする向きもあろうが、1990年代以降の大変な時期を経て、そうした短絡的な感覚を日本銀行が持つとみることは、この間の経験に学んでいないと評価するに等しい。
今日、日本銀行が考えているのは、日本銀行法にある「国民経済の健全なる発展に資する」ということに尽きるのではないか。金融政策の「正常化」も、日本経済が正常化してこそのことであり、その正常化が阻害されるようなことがあれば、金融政策だけを正常化しても意味がない。経済の現状にベスト・フィットの金融政策にする。それこそが現在の日本銀行が目指すものだろう。
では、日本経済の正常化とはどういうことか。