世界に例のない「中央銀行が株式市場を下支え」

 ETF買い入れは、アベノミクスを支えた日銀の「異次元の金融緩和」策の一つでした。異次元金融緩和は、年2%の安定した物価高と賃金上昇の好循環を生み出すことを狙いに、黒田東彦・前日銀総裁の任期がスタートした2013年4月から始まりました。

黒田日銀総裁(当時)は2013年に大胆な金融緩和策を打ち出した(写真:ロイター/アフロ)

 このため、ETFの買い入れも黒田時代に導入されたと思われがちですが、実際にETF購入を始めたのは黒田氏の前任、白川方明総裁(当時)で、2010年のことでした。

 中央銀行が株式市場を下支えする目的で、ETFを通じて企業の株式を保有する例は世界で他にありません。

 日銀は、株式市場が一定程度以上の下落に見舞われた際、半ば機械的にETFを買ってきました。しかし株式の価格は、各投資家が個別企業の業績見通しなどに従って売買した結果として形成されるのが市場本来の姿です。

 日銀のETF購入はこれを歪めるものだとして、根強い批判も存在します。日本以外の各国の中央銀行がこの政策を採用しない背景にはこうした事情があるようです。