“フェイク”に飛びつき、持ち上げたマスコミ
当時は、英米以外の外国留学組はまだ珍しかった時代である。私は東大法学部の助手だったが、20代前半の若さで海外へ出ることは、例外的な「不祥事」であり、処分の対象となるという変な時代だった。
マスコミにとっては、フランス留学からの帰国でも「貴重品」であり、恥ずかしくなるような褒め言葉で迎えられた。まして、エジプトに留学し、カイロ大学を首席で卒業となると、メディアが飛びつかないほうが不思議である。
私は、規則上パリ大学の大学院に籍を置き、現代国際関係史研究所で勉強したので、「客員研究員」と履歴書には記してあるのみである。小池氏の場合はそこが違っており、黒木亮氏が指摘するように嘘を書き連ねた履歴書を仕立てあげている。彼女は、1982年に『振り袖、ピラミッドに登る』という本を出版しており、私もサイン本を頂戴している。
テレビ局は視聴率を稼ぎ、出版社は部数を伸ばすために、セールスポイントを探す。私の場合は、フランス社会党の友人が二人、ミッテラン政権の閣僚に就任したが、私の「実力」を誇張するために、そのことをメディアは大きく取り上げた。小池氏の場合、最大の売り文句が「カイロ大学首席卒業」だったのであり、彼女はそれを武器にして、出世の階段を登っていったのである。
アラビア語を学んだり、エジプトに留学したりする日本人はごく希であり、嘘を言ってもすぐにはばれない。フランス語となると、そんなわけにはいかないし、少し喋らせてみれば、本当に語学力があるのかどうかはすぐに分かる。そのフランス留学組の私でさえ珍重するマスコミであるから、「カイロ大学首席卒業」の才媛を放っておくはずはない。
40年前の話であるが、当時から平気で嘘を言っていたのだと再認識させられた。自己に有利になれば、真実などどうでもよいと開き直れる度胸は、“fake news”と叫んで相手を罵倒するトランプ大統領も顔負けである。
平気で嘘を貫けるその態度が、この4年間の都政運営でも限りなく発揮されている。