いきなりですが、この原稿を書こうとネットにアクセスすると、突然、「東大病院血管の名医が解決法を伝授 医療用インソール」という文字が現れました。
なぜか文京区・本郷の東京大学付属病院(東大病院)ではなく、目黒区白金台の東京大学医科学研究所(東大医科研)の写真がレイアウトされた「フェイク広告」が表示されました。
こんなものは、東大病院と一切関係のないまがい物に過ぎません。でも、さすがにここまで露骨な詐称は問題です。
学内で検討するべく、いま証拠を一通り押さえてから、この原稿を書き始めました。これと同じくらいに、見る人が見れば、あまりに露骨な「フェイク」なので。
4月9日「文藝春秋・電子版」に小池百合子・東京都知事の「学歴詐称」疑惑の報道があり、雑誌の発売とともに都庁はハチの巣を突っついたような騒ぎらしい。
当該記事は『小池都知事「元側近」の爆弾告発「私は学歴詐称疑惑の“隠蔽工作”に手を貸してしまった」』。
告発したのは、元・環境官僚で「都民ファーストの会」事務総長を務め、現在は弁護士でもある小島敏郎氏。
小池氏の学歴詐称を隠蔽するシナリオを、それと意図せぬまま自ら書いてしまったと告白する手記や動画を公開したのです。
小島氏は、東大在学中に公務員試験と司法試験双方に合格。大蔵省の誘いを蹴って、できたばかりの「環境庁」に入り、次官級まで勤め上げた「気骨ある俊才」かつ現役の弁護士であることも、今回あまり報じられませんので記しておきます。
彼は順法的に筋道を立て、明確な言葉で語っています。
本件は、長年にわたってこの問題を追及、本件については当事者の一人でもある郷原信郎弁護士が詳細に解説していますが、以下では、郷原さんとは別の観点、大学や外交の角度から「東大病院インソール」と変わらない「カイロ大学学長卒業証明フェイク」を検討したいと思います。
日本語によるカイロ大学学長名義の怪声明
コロナ禍もまだ初期であった2020年6月9日、都議会自民党は「小池都知事のカイロ大学卒業証書・卒業証明書の提出に関する決議案」を提出しました。
ところが、驚くべきことに翌10日に取り下げてしまうという、不思議な事態が発生します。
これは同じ6月9日、なぜか「エジプト大使館」のフェイスブックに「カイロ大学の声明」として、学長名義の文書がアップロードされ、これを「根拠」に、自民党の声の大きな代議士が抑え込みにかかったと言われています。
上の「文書」リンクを見ていただけば分かる通り、なぜかこの「声明」は
1 「日本語」で書かれており、
2 学長の名もカタカナ、しかも姓名が区切られていない拙劣なもので、
3 原語(アラビア語はおろか、英語ですらない)表記でないばかりでなく「サイン」その他、文書の真実性を保証するありとあらゆるまともな証左を欠く代物。
見る人が見れば、これだけでも一目瞭然のフェイクです。
この件については、すでにこの時期のJBpress誌上でも、英国在住の作家、それもカイロ・アメリカン大学で修士を修了しているアラビア語のプロ、黒木亮氏が再三取り上げています。
(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60763)
(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60762)
(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60873)
リアルタイムの証言として、そちらもぜひご参照ください。
ところが、これらの記事が出稿された2020年6月、なぜか「エジプト大使館のフェイスブック」 に奇妙な作文が掲示されます。
すると、マンガのような展開なのですが、「二階から目薬」が効いたのか「都議会自民党」は決議案を取り下げ、莫大な広告の出稿元でもあるので、マスコミも追及の手をサッと緩めてしまった。
既報の詳細はご興味の方にご確認いただくとして、以下では「ありのままの現実」を直視するだけでも、分かってしまうポイントを指摘したいと思います。
そもそもどうして「国立カイロ大学」の声明が日本語で「エジプト大使館」の、しかも公式ホームページではなく「フェイスブック」に掲載されるのか?
これは、日本で言えば欧米にある日本大使館の「SNS」に、勝手に「東大の声明」が載っているのと同じくらいトンでもない事態です。
はっきり申しますが、過去25年来、東京大学で学術外交を担当してきた古手の教授職として断言します。仮に読み手が決まっている、普通のやり取りでもこんなメチャクチャはあり得ません。