6月2日、東京都は新型コロナウィルス対策本部会議にて「東京アラート」発令を正式決定。対策本部会議後に報道陣のぶら下がり取材に応じる小池百合子都知事(写真:Pasya/アフロ)

(黒木 亮:作家)

 小池百合子東京都知事の学歴詐称疑惑に関し、去る6月9日、東京都の男性が、告発状を東京地検に郵送した。2016年6月30日放送のフジテレビの報道番組「とくダネ!」で公開された小池氏の卒業証書と卒業証明書が偽造されたもの(偽造有印私文書行使罪)である可能性があるとの内容だ。告発は、文書の形式が整っていて、告発事実が具体的に特定されていれば、告発人が自主的に取り下げない限り、不受理にはできず、捜査が始まる。

 小池氏の卒業証書類に関しては、筆者も従来から不審な点があることを指摘してきた。スクリーンショットで見る限り、卒業証明書は最重要要件のスタンプが3つとも不鮮明で、エジプトの国家機関を表す鷲のマークも、その周囲の文字も読み取ることができない。また文章が男性形で書かれ、4つある署名者欄のうち署名が確実にあると言えるのは2つだけ、収入印紙が逆さまで、写真もピンでとめてある。これらは筆者が比較対照のために集めた20通ほどのカイロ大学の卒業証明書にはない特徴だ。卒業証書に関しては、さらに疑わしく、明らかにいくつかの要件を欠いている。

 筆者はこれらに関し、2018年11月に文書で小池氏に質問をしたが、回答はなかった。また小池氏は、これら不審点についてこれまで説明することもなく、都議会で再三にわたって卒業証書類を提出するよう求められたが、ことごとく拒んでいる。正規のルートで堂々と卒業したのなら、50回でも100回でも卒業証書類を開示できるはずで、こうした態度をとっている限り、疑惑が晴れないのは当然だ。

 検察の捜査が開始された場合、筆者はまだ公開していないものも含め、手元にある資料はすべて提供し、必要があれば裁判で証言するつもりだ。『女帝 小池百合子』(文藝春秋)で学歴詐称の実態を解明した石井妙子氏も捜査に協力するはずだ。また、これまで口を閉ざしてきた小池百合子氏の元夫も捜査に協力するかもしれない。

カイロ大学側は「卒業した」と言うが

 一方、6月8日にカイロ大学は、学長名で以下のような声明を発表した。

「カイロ大学は、1952年生まれのコイケユリコ氏が、1976年10月にカイロ大学文学部社会学科を卒業したことを証明する。卒業証書はカイロ大学の正式な手続きにより発行された。遺憾なことに、日本のジャーナリストが幾度もカイロ大学の証書類の信憑性に疑義を呈している。これはカイロ大学及びカイロ大学卒業生への名誉棄損であり、看過することはできない。本声明は、一連の言動に対する警告であり、我々はかかる言動を精査し、エジプトの法令に則り、適切な対応策を講じることを検討している」

 都知事選告示前のこの時期に、唐突にカイロ大学が横槍を入れてきたのは奇妙である。しかもその内容は、小池氏の卒業証書類に特にこだわっており、あたかもそれらの提示を拒んでいる小池氏を擁護しているかのようだ。さらにどの卒業証書類に言及しているのかも明確ではなく、小池氏の証書類のすべてが真正なものであるという内容になっている。しかし、すでに石井妙子氏が文春オンラインで指摘しているとおり、小池氏はロゴの異なる2つの卒業証書を持っており、小池氏の「卒業証書は1枚しかない」という言葉に従うなら、論理的に言って、そのうち一つは偽物だ。

6月9日、筆者の黒木亮氏と弁護士の郷原信郎氏は、小池都知事の学歴問題について記者会見を開いた。黒木氏は英国からビデオ中継で参加した。その様子はこちらで視聴できる。https://www.youtube.com/watch?v=iwwcwcfH3Ac

 カイロ大学の声明の背景には、日本のメディアによる卒業証書類の追及を断ち切るのに協力してほしいという小池氏側からの、文面も含めた要請があったのではないか? もし小池氏が今後「カイロ大学の声明があるので、卒業証書類は出さない」と言えば、この推測が裏付けられることになる。