カイロ大学の声明では、疑惑は何一つ解消しない
小池氏のカイロ大学“お友達人脈”については、すでにこのJBpressで<「カイロ大卒業」を取り繕うエジプトの小池人脈>に書いたとおりで、彼らがこういった声明を出すことは予想がついていた。残念ながら、こんな声明では、これまで指摘してきた学歴詐称疑惑は何一つ解消しない。
(参考記事)「カイロ大卒業」を取り繕うエジプトの小池人脈
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60763
筆者が小池氏の学歴詐称を疑う理由は、同じくJBpress<卒業が本当ならなぜ都知事は卒業証書提示を拒むのか>で列挙したとおりである。すなわち、(1)小池氏は卒業していないという物的証拠のある同居女性の証言、(2)卒業証書類の提出を頑なに拒む態度、(3)卒論に関する嘘、(4)「首席で卒業した」「トップの成績と言われた」、「1年目で落第したが4年で卒業した」、「1971年(存在しない)カイロ・アメリカ大学・東洋学科入学(翌年終了)」、「何度も卒業証書を公開した」(都議会答弁)、「卒業証書類を、複数のアラブの専門家が判読し、本物と認めた」(同)等、卒業や証書に関する小池氏の様々な嘘、(5)「お使い」レベルのアラビア語、(6)有効性に疑義のある卒業証書類、である。
(参考記事)卒業が本当ならなぜ都知事は卒業証書提示を拒むのか
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60762
組織防衛に走るカイロ大学
法律が比較的守られ、大学が政治から独立している日本では、大学が言うのだから間違いないと単純に考える人が多い。しかし、エジプトは腐敗認識指数世界180カ国中105位(ランキングが低いほど腐敗が深刻)という不正が横行する国なのである。しかも、カイロ大学は独立しておらず、軍事政権がコントロールする国家機関だ。政府や国家機関の言うことなど、あてにならないのはエジプトを知る人間の常識だ。
筆者の知人で長年中近東に住んでいるビジネスマンも、「石井妙子氏の本は読んでいませんが、これとカイロ大学の声明は恐らく相反するものでしょう。自分としては、カイロ大学の声明を単純に信ずるほどエジプトを信用していないので、どうってことないのですが」とメールを送ってきた。筆者もエジプトに約2年間留学し、その後、銀行のロンドン支店でエジプト航空向け融資(航空機担保付)などを手がけたので、友人のコメントには全面的に同意する。
今般の声明を仕組んだのは、小池氏がカイロ大学で最も頼りにしているアーデル・アミン・サーレハ文学部日本語学科長だと思われる。4年前に筆者がカイロでサーレハ氏に会った際には「小池さんはすごい! 度胸がある! 次の総理大臣になるかもしれない!」とはしゃいでいた。カイロ大学では、小池氏は「日本の総理大臣になるかもしれない人」と認識されているようだ。
エジプトは昔から経済が極めて脆弱で、国の長期格付けは、シングルBという投機的等級の中でも低い部類である。商業ベースでファイナンスを調達することはほぼ不可能で、社会的インフラの建設をもっぱら外国からのODA(経済開発援助)に頼っている。ODAがなくなれば、道路、橋、港、発電所、学校、病院等の建設ができなくなり、社会生活は支障をきたし、建設労働者は仕事にあぶれ、暴動が起きる。エジプトにとってODA獲得は国家の至上命題の一つなのである。
日本は巨額のODAをエジプトに供与しており、2016年までの総額は約9139億円に達する。
そうした巨額のODAを提供している国の「総理大臣になるかもしれない人」が実は自分のところの大学を卒業していないなどと言えば、学長、文学部長、日本語学科長は確実にクビが飛ぶ。カイロ大学の現文学部長アフメド・シェルビーニ氏は「カイロ大学では2年前から小池氏に関する書類を出す場合は学長の承諾が必要になった」と言い、カイロ大学の職員の1人は「小池氏の件は、政府の上層部が関与しているのではないかと思う」と話す。