エジプトではサダト・ムバラク時代(1970~2011年)以来、カネやコネで不正な卒業証書の発行が行われており、2015年にはカイロ大学のナッサール前学長もテレビのインタビューでこれを認め、2017年にはダリヤ・シェブルという女性ジャーナリストが、大学内部の記録まで書き換えて偽の卒業証書を発行する業者との接触に成功している。もし同居人女性の証言が正しければ、カイロ大学内の小池氏の記録は1976年から現在までのどこかの時点で書き換えられている。サーレハ氏や現学長は、万一小池氏の卒業が虚偽だと発覚しても、「大学内の記録を見て声明を出しただけ」と言えば責任を免れる。今般のカイロ大学の声明は、こうした文脈の中で読む必要がある。
カイロ大学の声明の2つの嘘
カイロ大学の声明は小池氏の入学年度については、何も述べていない。しかし、従来からサーレハ氏は日本のメディアに対し、「小池氏は1972年にカイロ大学に入学し、1976年に4年間で卒業した」と回答している。この回答は嘘である。なぜなら、同居人女性が、当時のメモや手紙という物的証拠にもとづき、小池氏は1973年10月に2年に編入したと証言しているからだ。さらに石井妙子氏は、当時エジプトの別の大学に留学していた女性から裏付け証言をとっており、筆者も当時をよく知る別の日本人から裏付け証言をとっている。
さらにカイロ大学の声明の「1976年10月に卒業した」という記述は、小池氏自身の本の記述とも矛盾している。小池氏は自著『振り袖、ピラミッドを登る』の中で、1年目に落第したと明記しており、そうであればエジプトの国立大学の制度上、卒業は早くても1977年になる。カイロ大学は、小池氏が言っているとおりに回答したつもりだろうが、小池氏が日本で書いたり話したりしていることまでは調べていないようで、嘘の声明になっている。
カイロ大学の声明などというのは、この程度の代物であり、真に受けると騙されるだけだ。
「カイロ大学卒業」のまま立候補すれば、さらに告発の可能性あり
今般、検察庁に郵送された告発状は、偽造有印私文書行使罪に関するものだ。なお小池氏がカイロ大学を卒業していないことが明らかになれば、公職選挙法の虚偽事項公表罪に該当するが、こちらは公訴時効が3年で、前回の都知事選に関しては、時効が成立している。しかし来る都知事選で再び「カイロ大学卒業」という経歴のまま立候補すれば、別の刑事告発を受け、捜査が始まる可能性がある。
筆者は同居女性の物的証拠のある証言や、小池氏の著書や議会発言に重大かつ非常に多くの矛盾があることに照らし、学歴詐称はすでに立証されていると考える。
小池氏は、来る都知事選にどのような学歴で出馬するのか、慎重に考える必要があるだろう。