はじめに一つナゾナゾを。
この上の図は、私の研究室の博士3年生、イジンヨンさんが作った「脳のゆらぎ」のトリックアートなのですが、画面上に固定されているはずの図がなぜか「ゆれ動いて」見えますね?
どうしてなのでしょう?
その答えは、本稿の末尾に記します。
さて、3月8日、米国テキサス州オースティンで「最先端技術やアートの祭典」と銘打つ商用イベント「SXSW」が開幕、初日は「質問を入力すれば自然な文章で回答が得られる生成AI」などのプレゼンテーションが相次いだと、NHKなどのメディアが報じています。
「数十万人が参加」する大祭典との触れ込みですが、欧州や基礎科学の観点から「採点」させてもらうと、多額の資金を投入しつつ内容は徹底してコーヒー同様「アメリカン」。
日本企業も出品しているようです。
私は内容を押さえ切っていないのでこれくらいにしておきますが、およそ地道で確かな明日の人類の叡智の模索というより、一攫千金を狙うヤンキーマインド満載のお祭り騒ぎ・・・が、冷静な欧州の目で見た実情と思います。
東京大学とドイツのミュンヘン工科大学は2015年から一貫して、次世代の高度自律システムと、そこで求められる社会的なルール作りを模索し続けています。
今日風に言えばAIですが、当時はメルケル政権の「インダストリー4.0」政策のもと、まずは自動運転技術に焦点がありました。
そして、人類の本質的な差異と共生の未来像、またそこで問われるルール「倫理から法理へ」などを研究しています。
冒頭に示したイジンヨンさんの「脳のゆらぎ」トリックアートは、人間にしか不可能な認知能力の典型を示すものです。
現状のAI、大規模言語モデルの演算システムは決して「錯覚」の現象を認識も認知もできません。
そして、こうした本質的な話題に、お祭り騒ぎはカスリもしないわけです。今回はそのような「地味な最先端」現場の模様をご紹介しましょう。