新年度となりました。フレッシュマンの皆さんは元より、多くの皆さんが新しい環境での生活をスタートされることでしょう。
今回はそんな中で役に立つかもしれない「ワンショット学習」の考え方をご紹介します。
AIが当たり前になりつつある今日、改めて注目を集めているのが、AIと人間の双方で有効に機能する「ワンショット学習」なのです。
「ワンショット学習」とは何か?
「ワンショット」という言葉は、1枚の写真を意味します。いまここに、21世紀の日本で、ごく普通の家庭に生まれ育った幼稚園児が1人いるとしましょう。
彼(あるいは彼女)はお父さんお母さん、兄弟姉妹やお友達など、周りの人間を知っています。
また「ワンワン」や「にゃんこ」など、身の回りの動物もよく知っている。しかしアフリカゾウやカバ、サイ、チーターなどは見たことがありません。
そんな幼稚園児が、たった1枚=「ワンショット」だけ、キリンという動物の写真を見たとします。
長い首、黄色っぽい体に斑点の模様がついている体・・・ありとあらゆる部位が、すでに知っている「ワンワン」とも「にゃんこ」とも違っている。もし実物を見れば、相当のインパクトを受けるかもしれない。
幼稚園児は、たった1枚の写真や絵からだけでも「キリンさん」という新しい概念を学習することができます。
この例のように、極めて数少ないデータ、例えばたった1枚の写真を学習するだけで、新概念を身に着けられる「学習」を「ワンショット・ラーニング」と呼んでいます。
一般にAIは、こうした学習が得意ではありません。
人類史上初めてパターンAIが「ネコ」のイメージを認識するためには、おびただしい数の画像データを取り込まねばなりませんでした。
ところが、人間であれば幼稚園児でも、たった1枚の画像から「キリン」でも「イリオモテヤマネコ」でも「コモド大トカゲ」でも、新概念を認識、記憶、学習することができます。なぜなのか?
また、仮にAIが人間のように、たった1枚の画像から新概念を学習できるようになったなら、無用のビッグデータを扱う必要もなくなり、実用上大変便利なはずです。
ここでは画像認識AIの「ワンショット学習」の話題には踏み込みませんが、1枚のデータを様々に加工変形して、それを学習し直している。
いわば「一粒で二度おいしい」キャラメルみたいなことをしています。
実際には、キャラメルよりはチューイング・ガムやおっさんの酒のつまみ、スルメイカみたいなもので、幾度も違う角度からかみしめることで「1枚の絵」から学習しようという人工的な工夫の産物。
ヒトや動物の脳認知とは、抜本的に原理が異なっています。では、人間の「ワンショット学習」は、何が違っているのでしょうか?