(3)ボルトン氏のインタビュー内容(出典:日経新聞2024年3月28日)

 トランプ前米大統領のもとで、2018年4月から19年9月まで、大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めたボルトン氏と日本経済新聞とのインタビューは、2024年3月25日オンラインで実施された。

①前大統領は日米同盟の米側利点理解せず

 ボルトン氏は、トランプ氏について「最も懸念されるのは同盟関係のあり方への認識の欠如だ」と指摘した。

 日米同盟が日本だけでなく「米国の安全保障も強化していることに気づいていなかった」と断じた。

②日米安保条約改正に備えよ

 ボルトン氏は、日米安保条約を念頭に「トランプが『日本にも米国を守る義務を負わせるように条約を改正してほしい』と言うことに備えるべきだ」と唱えた。

 また、ボルトン氏は前大統領が「日米同盟は不公平」などと主張した際、反論できるよう準備を促した。

③駐留経費増額は「不動産取引」

 前大統領は在任中に日本に在日米軍の駐留経費の増額を求めた。

 ボルトン氏は駐留経費の金額を「トランプ氏は適切でないと考えていた。単に不動産取引としか見ていなかった」と振り返る。

⑤NATO脱退なら「破滅的過ちに」

 ボルトン氏は、前大統領が再選されればNATOが機能不全に陥るおそれがあるとの認識を示し、米国が事実上脱退すれば「欧州と北大西洋の安全保障という観点で破滅的な過ちになる」と断定した。

⑥中国との貿易戦争

 前大統領は中国製品に60%超の関税を課すと公言する。

 ボルトン氏は、対中強硬姿勢に関し「長続きしないだろう。威勢がいいだけだ」と見通した。

 中国の習近平国家主席は前大統領を「交渉が簡単な相手で、媚びれば最悪の結果を避けられると考えている」と語った。

⑦トランプ氏の行動原理

 ボルトン氏は、前大統領の行動原理は「トランプの利益になると思うことをする。それが彼を突き動かす原動力だ」と説いた。

 中国が台湾に侵攻した場合に米軍を送るかどうかについての質問について、ボルトン氏は、「分からない。弱さを見せれば、中国はそれを利用するだろう」と述べた。

⑧米朝首脳会談

 前大統領は在任中に北朝鮮の金正恩総書記と史上初の米朝首脳会談に臨んだ。

 ボルトン氏は「間違いだった」と回顧した。

 金正恩総書記は前大統領が再選されれば懐柔するために「真っ先に電話をかけてくるだろう」との見方を示した。

 また、ボルトン氏は、ミサイル・核開発を続ける北朝鮮の脅威が増しており「日韓は協力し、トランプ氏に(北朝鮮との対話に)慎重であるべき理由を説明する必要がある」と唱えた。

⑨第2次トランプ政権が誕生した時のキーマンは誰か

 ボルトン氏は、予想するには早すぎると明言を避けつつ「トランプ流の統治の基本は人を不確実な存在にしておくことだ。選挙後まで誰にも人事を確約せず、求心力を保とうとする」と答えた。

 ボルトン氏に再び要職への打診があったら受けるかと問うと「呼ばれると思っていないし、仕えるつもりもない」と否定した。