(英エコノミスト誌 2024年3月30日号)
エネルギー危機の後、欧州は中国製品の輸入急増とトランプ関税の脅威に直面している。
欧州はもともと活気に満ちた地域として知られているわけではないが、今日の姿はどんな基準に照らしても「停滞」しているように見える。
2022年のロシアによるウクライナ侵攻後に発生したエネルギー危機で疲弊した欧州連合(EU)経済は、2020年代に入ってから4%しか成長しておらず、8%拡大した米国に後れを取っている。
2022年末以降に限れば、EUも英国も全く成長していない。
停滞のさなかに襲い掛かってくるショック
これだけでも十分に悪いのに、中国からの安価な製品の輸入が急増している。これは消費者には恩恵をもたらすが、製造業に打撃を与え、社会の不和や労働争議の拡大を招きかねない現象だ。
おまけに、ドナルド・トランプ前大統領が1年以内にホワイトハウスに返り咲き、欧州からの輸出に高い関税をかけてくる可能性もある。
欧州の不運はタイミングが悪い。
欧州大陸は今日、自ら掲げたグリーンエネルギーの目標を達成するため、そして防衛費増額を賄うために力強い経済成長を必要としている。
後者については、米国に対するウクライナの支援が枯渇したことが大きく響いている。
有権者はますます幻滅し、「ドイツのための選択肢(AfD)」のような極右政党を支持しがちになっている。
以前から経済成長の足を引っ張っている要因――急速な人口高齢化、高圧的な規制当局、そして不十分な市場統合――もまだ解消されていない。
これらの課題に対応しようと、欧州各国政府は活発に動いている。だが、動く時には気をつけなければならない。
欧州が直面しているショックはほかの地域からもたらされたものではあるが、欧州の政策立案者がミスを犯せば事態が大幅に悪化する恐れがある。