(英エコノミスト誌 2024年3月23日号)

ラファで食糧支援を待つ子供たち(2023年11月8日撮影、写真:AP/アフロ)

イスラエルがもっと良い戦略を見つけられるよう米国が手を貸すべきだ。

 地獄のような光景からガザを救い出す道は、細いながらもまだ残っている。一時停戦と人質解放を実現できれば、イスラエルで政権交代が起きる可能性がある。

 ガザ南部にいるハマスの残党を封じ込めたり追い散らしたりできるかもしれない。

 そうなれば、米国とその仲間のペルシャ湾岸諸国の支持を得て、2国家共存の解決策に向けた話し合いが瓦礫の中から始まるかもしれない。

 しかし、停戦協議が失敗に終わる可能性もそれと同じくらいある。

 失敗に終われば、イスラエルは建国後75年間において最も厳しい道のりに閉じ込められ、終わりのない占領や極右の政治、そして孤立が続く恐れがある。

 多くのイスラエル人は認めていないが、最終的には政治的な清算の時がやって来る。

 そしてそれがパレスチナ人の運命のみならず、イスラエルが今後の75年間に繁栄できるか否かを決めることになる。

ガザ侵攻の重大な失敗

 イスラエルを支持する人は今、非常に居心地の悪い思いをしている。

 昨年10月に始めた戦争はハマスから自国を守る戦争として正当化できた。確かにハマスのテロリストはユダヤ人が安全に暮らせる土地としてのイスラエルの概念を脅かす残虐行為を働いた。

 イスラエルは今日までに、ハマスの戦闘部隊を恐らく半分壊滅させた。だが、いくつかの重要な点でこのミッションは失敗している。

 まず、イスラエルがガザへの支援物資の提供・配布に積極的に手を貸さなかったことが、避けられるはずの人道的悲劇につながった。

 戦争の犠牲になった民間人は2万人を超え、今も増え続けている。

 ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いる極右政権は、戦後のガザをパレスチナ暫定自治政府(PA)が運営する計画も国際機関が運営する計画も拒否している。

 実現の可能性が最も高いのは、軍による再占領だ。

 ヨルダン川西岸も加えれば、イスラエルが400万~500万人のパレスチナ人を恒久的に支配することもあり得る。

 イスラエルは国内でも失敗している。

 問題はネタニヤフ氏のひどい指導力よりも根が深い。

 入植活動の盛り上がりと超正統派ユダヤ教徒の増加を受けて政治は右傾化し、社会は二極化した。

 ハマスの攻撃を受けた10月7日以前は、その二極化が司法の独立をめぐる対立で顕在化していた。

 戦争のせいで対立の利害が大きくなり、連立に参加する極右政党は戦時内閣からは排除されているものの、扇動的なレトリックを用い、暴力を振るうよう入植者をあおり、援助や戦後に向けた計画策定を妨害しようとすることでイスラエルの国益を損なっている。

 イスラエルの防衛当局は優秀で現実的だが、もうすべてを指揮しているわけではない。