(立花 志音:在韓ライター)
今、韓国では公衆の面前で医師と政府が大ゲンカをしている。
韓国政府は医者不足の解消のために、医学部の定員を2000人増員すると決めた。これに対して、医師たちはストライキはおろか集団辞職という行動を取った。現役の医大生たち中には、休学届を出して抗議に参加している学生もいると聞く。
ほとんどの報道機関は、医者が職務を放り出して自分の利権を守ろうとしていると伝えている。
4年ほど前にも、医師たちがデモを起こした時があった。医師不足を理由に、当時の文在寅大統領が漢方医にも医師免許を出すという案を出した時のことだ。現役の医師たちは、自分の免許を返納して医者を辞めると大騒ぎだった。
当時から、筆者は「なぜ医師たちがこのような行動を起こさなければならないのか、そんなに韓国の医師は利己的なのか」という疑問を持っていた。筆者がネット上で交流している韓国人の医師たちは、そのような人たちではないからだ。
韓国の医療問題の一つに、小児科医院が少ないという問題がある。
子どもが発熱したワーママ(働く女性)は朝一番、小児科の診療が始まる前から列を作らなければならないとか、並んで診療を受けても5分で返されるとか、様々な不満がママカフェと呼ばれるインターネット掲示板に寄せられる。
筆者は地方住まいの上、徒歩圏に小児科があり、フルタイム勤務をしていない。韓国で一般的な共働きで子育てをしている家庭とは全く違う環境なので、この問題が全くの他人ごとである。
日本でも子どもが37.5度以上の熱が出たら、職場に電話がきて勤務中でも迎えに行かねばならず、同僚たちの冷たい視線に耐えられないという悩みは、ワーママあるあるである。
ただ、韓国の病院事情は日本のそれとは大きな違いがある。韓国の医療は政府が規制でガチガチにして、医者が思うように診療ができないという実情があるのだ。