- オーストラリアでのワーキングホリデー、いわゆる「ワーホリ」が大人気だ。
- 『安いニッポンからワーホリ!』(上坂徹、東洋経済新報社)から一部を抜粋し、日本人がオーストラリアに出稼ぎにいく理由を2回に分けてお届けする。
- 前編では、時代と共に変化してきた日本人がワーホリの目的を解説した。後編では、オーストラリアがワーホリを引き付ける巧みな仕組みを掘り下げる。(JBpress)
すでに紹介しているように、オーストラリアの労働者の最低賃金は高い。時給23豪ドルは、日本円で約2000円。これは、世界最高水準だ。
OECDの国別平均賃金データ(2022年)を見ても、オーストラリアは年間5万9408米ドル(約860万円)。日本は4万1509米ドル(約600万円)である。
オーストラリアの賃金は、なぜこれほど高いのか。それは、端的に高い賃金が可能になっているからに他ならない。物価の高さもその一つ。だから、企業は人件費を高くすることができる。
実際、私も取材時に実感したが、シドニーの物価は高かった。先にも触れているが、ランチのから揚げ定食は日本円で約2000円だったし、すき焼き定食は3000円、生ビールとラーメンで3000円を超えた。また、サンドイッチは700円、寿司ロールは600円、空港で売られているミネラルウォーターも400円ほどだった。
だが、高いのは外食や加工品なのだ。現地でつくられている野菜や果物、お米などは日本よりも安いのではないか、と思えるものもあった。ワインが売られている店にも行ったが、あまり高いとは感じなかった。これは、国が補助金などで物価をコントロールしているのだろう。
もちろん、生活者にとっては、物価は安いにこしたことはない。これほどありがたいことはない。しかし、労働者としては果たしてどうなのか。生産性を上げるなどの企業努力もあるが、基本的には物価、つまり製品価格が上がっていかなければ、賃金は上げようがないのではないか。