(写真:AP/アフロ)

 米アップルが開発中とされる電気自動車(EV)「Apple Car」は発売時期が約2年遅れ、早くとも2028年になる見通しだと、米ブルームバーグが1月23日に報じた。発売時期の延期に加え、搭載する自動運転機能のレベルを落とす。野心的な設計から現実的な設計へと戦略を転換し、市場投入を急ぐねらいだという。

「レベル4」から「レベル2プラス」に引き下げ

 アップルは当初計画で、場所の制限なく完全自動運転で走る「レベル5」を搭載したEVを25年に発売することを目指していた。だが、ブルームバーグは22年12月、アップルが技術水準を「レベル4」に下げ、発売目標を26年に変更したと報じた。レベル4は、幹線道路などにおいて一定の条件下で完全自動運転する区分である。

 今回の報道によると、アップルは区分をさらに下げ、幹線道路でのハンドルとペダルの操作支援や渋滞時に先行車を自動追従する「レベル2プラス」に切り替える方針だ。この区分での運転主体はドライバーであり、常に操作を引き継げる状態にあることが求められる。米テスラの現行EVに搭載されている運転支援システム「Autopilot(オートパイロット)」に似ているとブルームバーグは報じている。

 かつてアップルは、ハンドルもペダルもない自動車を開発することを想定していたが、今はその計画は棚上げされた。緊急時に遠隔で車を制御するリモートコマンドセンターの開設も計画していたが、今回の機能縮小により、当面その必要性もなくなったようだ。

 アップルはこの新方針について、欧州の製造パートナーと協議してきた。初期モデルを市場投入した後、レベル4に対応するシステムに改良し、当初の目標に近づける考えだ。

 ブルームバーグは関係者の話として、「アップルの社員は、この戦略転換がApple Carにとって極めて重要な局面になると考えている」と報じた。「技術レベルを下げることで、アップルがようやくEVを市場投入できるか、それとも経営トップがプロジェクトの存続を真剣に再考するかのどちらかだ」と関係者は話す。