ロイター通信は6月8日、米アップルが中国の電池メーカー大手、寧徳時代新能源科技(CATL)や比亜迪(BYD)と電気自動車(EV)用車載電池の調達に向けて初期段階の協議を進めていると報じた。
米国内に工場、バイデン大統領の意向と一致
関係者によると、アップルは米国内に製造施設を建設することを取引の条件にしている。米大統領経済諮問委員会(CEA)のジャレッド・バーンスタイン委員は同日、ロイターに対して「アップルが最先端電池の生産工場を米国内に建設することを協議していると、私は理解している」と述べた。
同氏は「これは、大統領が示しているサプライチェーン(供給網)の国内確保に関する意向と一致する。とりわけ米国が世界シェアを獲得できる可能性のある分野に注力する」とも説明した。
バイデン大統領は1兆7000億ドル(約186兆円)の大型インフラ投資計画を掲げており、そのうち1740億ドル(約19兆400億円)をEV分野に充てる考え。電池メーカーに対する税控除や助成金などの優遇制度を導入し市場拡大につなげるという。
ただ、CATLは米中の政治的な緊張やコスト増への懸念を理由に米工場の建設に難色を示している。CATLは車載電池の世界最大手。米テスラなどの自動車大手と提携している。一方のBYDは世界4位。報道によると、BYDはこれまで車載電池を主に自社EV向けに製造してきた。だが最近は他の中国自動車メーカーへの供給も増やしているという。
アップルCEO、外部委託を示唆
アップルはこれまで一度も自社のEV開発計画を公表したことはない。ただ、同社のティム・クックCEO(最高経営責任者)が時折EVについて語り、その都度メディアが大きく取り上げている。
21年4月には、ポッドキャストのインタビュー番組に出演して自動運転EVの開発計画を示唆したと伝えられた。同氏は「我々は製品を取り巻く重要技術を自社で持ちたいと考えている」とし、「ハードウエアやソフトウエア、サービスを統合したいと考えており、それらの交点を探っている。そこに不思議な力が宿ると信じているからだ」と述べた。
アップルはEV分野でもスマートフォン「iPhone」のように中核技術を自社開発・保有し、製造を協力企業に依頼するモデルを考えているとされる。