上海モーターショーに展示されたテスラ モデルY(写真:Featurechina/アフロ)

 米電気自動車(EV)大手のテスラが4月26日に発表した2021年1~3月期の決算は、小型SUV(多目的スポーツ車)や中国市場が好調だったことなどから大幅な増収増益となった。

 売上高は前年同期比74%増の103億8900万ドル(約1兆1300億円)。純利益は同27倍の4億3800万ドル(約475億円)で、四半期ベースで過去最高を更新。7四半期連続の黒字を達成した。他の自動車メーカーへの温暖化ガス排出枠(クレジット)の売却収入が同46%増の5億1800万ドルとなり、業績を下支えした。

 EV販売台数は同約2.1倍の18万4877台で、四半期として過去最高を更新した。小型セダンの「モデル3」と小型SUV「モデルY」の合計が同2.4倍の18万2847台となった。同社が20億ドル(約2200億円)を投じて建設した中国・上海工場で生産したモデル3の一般向け納車を始めたのは20年1月だった。その後同国でモデル3の生産能力を増強するとともに、モデルYの生産ラインも構築。21年1月に同工場で製造したモデルYの出荷を開始しており、同モデルの販売が好調だった。

 一方、高級セダン「モデルS」と高級SUV「モデルX」の合計は同83%減の2030台にとどまった。同四半期はモデルSとモデルXの製造をしておらず、在庫分の販売に限られた。

 ただ、テスラはモデルSとモデルXの新型車を市場投入する計画だ。米CNBCや米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、同社はモデルSの新型車は21年5月に、モデルXの新型車は同7~9月期に納車できるとの見通しを示した。

 テスラは現在、テキサス州オースティンに、カリフォルニア州フリーモントに次ぐ米国内で2つ目のギガファクトリーを建設中だ。ドイツ・ベルリン郊外でも米国、中国の拠点に次ぐ4番目のギガファクトリーを建設しており、いずれも21年に操業が始まるとしている。また、今後の販売台数の見通しは「数年間、平均50%の伸びで推移し、21年は50%を上回る見通し」とし、前回1月の予想を据え置いた。

半導体不足で工場一時停止

 テスラのEV事業を巡っては、さまざまな要因から課題が山積しており、21年は同社にとって波乱の1年になりそうだと、ウォール・ストリート・ジャーナルは伝えている。要因とは半導体不足、衝突死亡事故、中国リスクなどだ。

 イーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は投資家向け資料で「迅速に新たなマイクロコントローラーに切り替えるなどして半導体の問題を切り抜けた」と説明した。テスラでは21年2月に、部品不足を理由にカリフォルニア州フリーモントの工場を一時停止した。米ゼネラル・モーターズ(GM)や米フォード・モーター、独フォルクスワーゲン(VW)も半導体不足の影響を受けて減産を余儀なくされた。

 また、世界的なEV需要の増大は同社にとって追い風となるものの、大手メーカーやスタートアップ企業などの競合がEVに注力しており、競争が激化している。米調査会社のコックス・オートモーティブによると、米EV市場におけるテスラのシェアは21年1~3月期に70%となり、1年前の82%から低下した。