米アップルが、主要な報道機関や出版社に対し、生成AI(人工知能)システムの開発に関する交渉を持ちかけたと、米ニューヨーク・タイムズや英ロイター通信が12月22日までに報じた。
米誌ニューヨーカーや米誌ピープルなどの出版社と交渉
アップルは開発中の生成AIのマシンラーニング(機械学習)に、報道機関のニュース記事など、大量のコンテンツを利用したい考えだ。そのライセンス供与を受けるため、少なくとも5000万ドル(約71億円)規模の複数年契約を提案していると関係者は話している。
アップルが接触した報道機関・出版社は、ファッション誌「ヴォーグ」や米誌「ニューヨーカー」などを傘下に持つ米出版大手コンデナストや米NBCニュースのほか、米誌「ピープル」や米ニュースサイト「デイリー・ビースト」などを傘下に持つ米IACなどだ。
このアップルの動きは、同社が生成AIの開発競争でライバルに追いつこうとしていることを示していると、ニューヨーク・タイムズは指摘する。対話型AI「Chat(チャット)GPT」を開発する米オープンAIや同社と資本業務提携する米マイクロソフト、「Bard(バード)」などを開発する米グーグルはこの分野で先行している。アップルは2011年に発売したスマホ「iPhone 4S」に音声アシスタント「Siri」を導入した。当時は世界中の注目を集めたが、最近は大きな進展が見られないと指摘されている。
出版社側は競争上のリスクを懸念
一方で、今回アップルが接触した出版社の中には、提案に乗り気でないところもあるようだ。複数の出版社の幹部はアップルの提案内容が広範すぎることを懸念している。初期の提案は、出版社が公開済みのコンテンツを幅広くライセンス供与するというもので、アップルがそれらコンテンツを使用することによって生じる法的責任を出版社が負う可能性がある。
加えて、アップルは報道コンテンツと生成AIをどのように展開していくのか、詳細を明らかにしていない。このことが出版社の懸念材料になっている。同社製機器は、ニュース閲覧に関しても膨大なユーザー基盤を持つ。出版社にとって潜在的な競争上のリスクがあると懸念されている。