米ブルームバーグ通信はこのほど、米アップルが、米オープンAIや米グーグルなどと競合する生成AI(人工知能)技術の開発を進めていると報じた。一部のエンジニアが「Apple GPT」と呼ぶ、対話AIサービスをすでに作成したという。
アップルの大規模言語モデルとフレームワーク
オープンAIの「Chat(チャット)GPT」や米グーグルの「Bard(バード)」といった生成AIでは、大規模言語モデル(LLM)がその技術の中核を成す。ブルームバーグによれば、アップルは自社のLLM開発に向け、「Ajax(エイジャックス)」と呼ぶ独自フレームワークを構築した。その基盤を用いてApple GPTを作ったという。ただ、同社はまだ、この技術を消費者に提供するための明確な戦略を打ち出していない。
アップルは長年、自社製品にさまざまなAI機能を取り入れてきた。その一方で、生成AIの導入については慎重な姿勢を示している。ティム・クックCEO(最高経営責任者)は23年5月の決算説明会で、「(生成AIには)潜在的な可能性はあるが、解決すべき問題がいくつかある」と述べていた。同氏は、アップル製品にさらに多くのAIを取り入れていくとも述べたが、「非常に慎重な方法で」と付け加えた。また、米ABCテレビのニューストーク番組に出演したクック氏はChatGPTを使用していると明かしたものの、「注意深く見ている」と述べるにとどめた。
アップル、生成AI乗り遅れ懸念
今後スマートフォンなど電子機器の操作方法が大きく変化する可能性があるといわれている。こうしたなか、アップルはその変化の機会を逃してしまうのではないかと懸念しているという。生成AIは人々のスマホやパソコンとのつながり方(インタフェース)を変革させる可能性を持つといわれている。年間3200億ドル(約44兆6700億円)の収益を上げるアップルのハードウエアが、AIの進歩についていくことができなければ、同社の主力事業は打撃を受けることになる。
そこで、アップルはフレームワークAjaxを使いAIサービス基盤を開発した。関係者によると、アップルがAjaxを構築したのは2022年だった。その目的は社内での機械学習(マシンラーニング)開発を統一することだったという。
アップルはこのシステムを基に、検索や音声アシスタント「Siri」、地図アプリ「Maps」などにAI関連の改良を加えている。Ajaxは現在、LLM開発に用いられているほか、対話AIツール(Apple GPT)の基盤になっている。