(写真:ロイター/アフロ)

 欧州連合(EU)の欧州議会は6月14日、生成AI(人工知能)を含む包括的なAI規制案の修正を499対28の賛成多数で採択した

 公共空間におけるバイオメトリック(生体情報)を用いた遠隔監視システムへの利用禁止や、「Chat(チャット)GPT」などが生成したコンテンツに関する情報開示の義務化などを盛り込んだ。

犯罪捜査のAI活用、一部禁止へ

 米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、EUの執行機関である欧州委員会は2021年にAI規制法案を提出していた。しかしその後登場しブームとなった生成AIを含む包括的規制を定める取り組みが急務になっていた。今後は欧州議会と加盟国が協議して最終案を作成し、年内の合意を目指す。

 AI法と呼ばれるこの包括的規制案では、公共の場におけるリアルタイムの遠隔生体認証監視へのAI活用を禁止する。また、顔認証データベースの構築を目的とした、監視映像の収集やインターネットからのデータ収集も禁止する。過去の犯罪行為などのデータ分析に基づき将来の違法行為を予測する、いわゆる予測捜査(Predictive Policing)へのAI活用も禁じる。2002年に公開された米国のSF映画『マイノリティ・リポート』(殺人予知システムがテーマ)のような世界も想定しているようだ。

 また、人々の健康や安全、基本的権利、環境に重大な損害を与えるAIシステムを、「高リスクアプリケーション」に分類する。選挙の投票者や結果に影響を与えることを目的としたAIシステムや、4500万人以上の利用者を持つSNS(交流サイト)で使用されるAI活用の推奨(レコメンダー)システムも、この分類に入るという。

利用した著作権データの詳細開示も義務付け

 加えて、ChatGPTのような一般利用を目的としたAIの提供企業には、厳格な管理・情報開示義務が課される。例えば、EU市場で一般提供する前に、潜在的なリスクを評価するよう義務付けられる。これには健康、安全、基本的権利、環境、民主主義、法の支配といった項目がある。