香港政府トップの李家超行政長官は、「香港政府は全力を挙げて、国家の安全に危害を及ぼすいかなる逃亡犯をもひっ捕らえる」と激怒した(「民主活動家・周庭氏亡命に香港行政トップが怒りを爆発させた3つの理由」、JBpress、2023.12.7)
「いかなる逃亡犯も、いますぐ自首することだ。そうでなければ終身、逃亡犯であり続け、終身追われる身となるだろう。香港警察は、本件で寛大な処置を試した。だが恩を仇で返されたのだ」
それでも飽き足らず、こう付け加えた。「『逃亡犯』は、誠の心を売り払い、同情を得るための言い訳をでっちあげ、自分を正義にみせようとして、恥ずべき行為をした。特区政府は全力でいかなる国家安全に危害を加える逃亡犯を追跡逮捕する」
この発言を受けて、中国外務省報道局長の汪文斌(おう・ぶんひん。あの白髪の痩せたじいさん)は記者会見で、「香港警察は法の支配に挑戦する無責任な行動を強く非難した。中国、香港は法治社会だ。いかなる人にも法外特権はなく、違法行為は法で罰せられる」と非難した。
いつものことで驚きもしないが、恥知らずなモノいいである。法に公然と反する無責任な行為」だの「法治社会」が、聞いてあきれる。
ソクラテスは「悪法もまた法なり」といって、死罪を受け入れたが、そんなバカなことはない。悪法は悪法である。廃棄されなければならない。
「香港のことは心から愛しているが…」
周庭さんは「カナダに中国の秘密警察が置かれていると報じられている。外国にいても身の安全がとても心配だ」などと不安を言葉にしている。
周庭さんと交流のあった立命館大政策科学部の上久保誠人教授は、その点についてこのように推測している。
彼女の宣言は、「一定の安全の確保が保障され」「カナダ、もしくは英米の支援に何らかの確証を得たのだと思う」と推測している。さらに「カナダは身柄の引き渡しなどは当然しない。カナダ政府は国家の威信をかけて査証(ビザ)を得ている周氏を守ることに自然となる」(「カナダは国の威信かけ周庭氏守る 上久保誠人・立命館大教授」、産経ニュース、2023/12/6)。
たしかにそのように思われる。カナダ政府が表に出てくることはないだろう。国家同士の対立にはしたくないからである。もしそうなれば、中国がカナダ人を人質にとることなど、なにをやるかわからないからだ。
ただ、なんらかの「確証」があるにしても、彼女が「身の安全がとても心配だ」と不安が消えないのは、中国の怖さを知っているからだ。
彼女の家族はまだ香港にいると思われる。わたしは冒頭で、いいニュースが飛び込んできた、と書いたが、周庭さんにとっては、それどころではないのである。
愛国教育を受けさせられたとき、周庭さんは「私はもともと中国の経済発展を否定していません。ですが、このような強大な国家が、民主的な人を監獄に送り、出国の自由を制限し、パスポートを返却するために、中国大陸の愛国展示の参観を要求するのです。これは一種の弱さではありませんか」といっている。
中国は世界2位の大国だと誇っているが、たった一人の若い女性を恐れている。
周庭さんは「香港のことは心から愛しているが、同時に恐怖の場所のようにも感じる」と語る。彼女の願いはたったひとつ。「私はただ自由に生きたい」ということだけだ。