中国全国人民代表大会の開幕式で拍手する習近平国家主席(2021年3月5日、写真:ロイター/アフロ)

(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

 最近、北朝鮮がやけにおとなしい。代わりに、中国のニュースがやたら頻繁にある。

 コロナウイルスの発生源は不明だが、調査要求をしたオーストラリアに対しては大麦やワインの輸入規制をかけたり、台湾産のパイナップルを輸入禁止にしたりという、けちくさい嫌がらせから、南シナ海での人工島の軍事基地の急造、相変わらずの尖閣諸島の領海侵犯、台湾に対する威嚇、スリランカのハンバントタ港を債権のカタに99年間、中国国有企業の租借地にしたりと、ならず者国家ぶりを発揮している。

 国内では、ウイグルや内モンゴルやチベットを弾圧し、香港の民主派を好き勝手に逮捕して、民主化を徹底的に抑圧している。中国に批判的な国の国民を、報復としてスパイ容疑で逮捕起訴し(2015年以降、日本人9人が「スパイ行為」で実刑判決を受けている)、人権派弁護士を強権的に逮捕拘禁し、政府に批判的な市民ブロガーをとっつかまえたりして、もう怖いものなし、やりたい放題である。

 世界最大のネット人口をもつ中国であるが、国民はツイッター、フェイスブックなどのSNSを使用できない。インターネットにも厳しい規制がある。ウィキペディアによると、数百台のスーパーコンピュータによってネット内容が自動検閲され、インターネットポリス(網警)やネット秘密警察(世論分析官)は10万人から200万人いるとされる。政府に不都合な批判が現れると、通常は数分で削除される。

つづく香港の民主派抑圧

 香港の「民主の女神」周庭氏が昨年12月2日に、禁固10か月の実刑判決を受けてから、3か月が経った。上訴・保釈申請をしたが却下され、彼女は「失望しています」「刑務所の生活に慣れず、体調がよくありません」との言葉を残した。12月5日、中国の唐一軍司法相は「中国の憲法は当然、香港に適用される」と述べた。

 周庭さんは保釈されるどころか、年末には、重大事件の受刑者が収容される香港・新界地区の大欖女子懲教所に移送されたという。移送前の周庭さんは、寒さのため服を7枚重ね着をしていたといわれるが、それを最後に、彼女のその後の情報が断たれている。

移送後の情報が途絶えた周庭氏(2019年9月資料写真、写真:AP/アフロ)

 香港政府はその後も民主派に対する締め付けをゆるめず、今年1月6日、活動家や区議ら53人を国安法(国家安全維持法)違反容疑で逮捕した。7日、加藤勝信官房長官は「我が国の立場に照らし、許容できず、重大な懸念を強めている」と述べ、9日には米、英、カナダ、オーストラリアの外相が「深刻な懸念」を表明した。しかしこれらはなんの役にも立たず、それどころか当局はこれが我々の回答だというように、2月28日、さらに民主派の議員・区議47人を逮捕したのである。

 中国を見ていると、世界を実効支配しているのは経済力と軍事力だということが明白である。欧米にはまだ自由と民主主義という理念があるが、中国にはそんなものはなにもない。理念は聞く耳を持っているものにしか有効ではない。中国は世界にとっていいことはなに一つせず、ただ災厄だけを振りまいているのである。世界は口だけは出せるが、手も足も出ない。