若者が親戚づきあいを避けようとする大きな理由は、価値観の差だ。

 中国に限らないが、農村をはじめとする地方の方が人づきあいが濃く、親戚をはじめとする人間関係で深い付き合いを求められる。帰省した友人に筆者が同行した際にも、「結婚はまだか」「子供にどれくらいの教育費をかけるのか」「親戚の経済的な支援はどれくらいできるのか」といった地方ならでの濃い会話を目の当たりにした。

 そのほかの知人に聞いても、「深い人間関係を求められて困惑した」「共通の話題を見つけることができない」「ときに居心地の悪さを感じた」などといった、カルチャーギャップを感じていることが多いようだ。

「親戚から受けた突拍子もない要求」というネット掲示板は、2億回近い閲覧数があり、親戚づきあいの難しさの一端がうかがえる。

「親戚から受けた突拍子もない要求」という掲示板(「你的亲戚提过什么过分的要求?」より)「親戚から受けた突拍子もない要求」という掲示板(「你的亲戚提过什么过分的要求?」より)

 では従来家族や親戚が担っていた、精神的なつながりや経済的な助け合いは、今後だれが担うのだろうか。

新しい社会的なつながりはどこに?

 親戚づきあいが比較的少ないと話す中国人の知人たちに聞くと、従来親戚が担っていた精神的なつながりは、さまざまな立場の人たちが代わりを果たしているようだ。子供時代の思い出は、同じく一人っ子である同級生と共有する。社会人になった後の苦労や子育てに関する相談などは、オンラインゲームをはじめとするデジタルなつながりの中で行っている。ゲームプラットフォームが、チャットなどのユーザー間交流機能に力を入れているのは、そういうニーズを反映したものだ。

 新しい形の経済的な助け合いの例としては、「非血縁者同士による住宅購入」という仕組みができてきている(「深圳的年轻人,决定“拼多多”式买房!」)。

 中国では、不動産を購入する際、本人だけでなく、家族や親戚がお金を出し合うことも多かった。ところが、深圳市や広州市などでは知人や友人同士で資金を出し合い、住宅を購入することが増えている。

 また従来血縁関係を基に取得していた都市戸籍について、知人でもできるようにする政策がとられているようだ(「投靠朋友落户一线大城市?记者调查:各地迁户政策不一,部分城市可实现“投靠朋友落户”」より)。

 血縁・地縁関係を基にした親戚づきあいが担っていた社会的な役割は、都市部を中心として、新たな人的ネットワークに置き換わっていくことになるのだろう。