紛争前から子どもの8割が鬱などの症状
2022年のユニセフの統計では、パレスチナにおける0歳から17歳までの子どもの割合は、半数近くの45%ほどとされている*8。2007年よりイスラエルが厳しく移動の規制を行う封鎖を開始したガザにおいても半数近くが未成年であり、セーブ・ザ・チルドレンは去年、2007年から続くイスラエルによるガザ封鎖を知らずに生まれ育った子どもの数は、80万人近くにも及ぶという資料を発表した*9。
*8:THE SITUATION OF CHILDREN IN THE STATE OF PALESTINE(UNICEF)
*9:AFTER 15 YEARS OF BLOCKADE, FOUR OUT OF FIVE CHILDREN IN GAZA SAY THEY ARE LIVING WITH DEPRESSION, GRIEF AND FEAR(Save the Children)
同NGOによる報告書は、2022年までに既に、ガザ地区に暮らす子どもたちの実に8割近くが鬱や不安、恐怖に怯えるなどの症状を抱えながら暮らしていると指摘している。2018年の調査と比較すると、メンタルに不調を訴える子どもが3割程度増加していると伝えていた。
約半数の子どもたちが自殺を考えたことがあり、6割ほどが自傷行為に及んでいたという。同自治区ではイスラエルとの暴力的な衝突が、先月から開始された大規模な攻撃以前にも度々起きていた。調査報告書では、子どもたちがこうした状況下で、既に不眠や悪夢に怯えていたと言及している。
そんな脆い精神状態にあった上に、今回の大規模な攻撃で両親や家族、兄弟姉妹や友人などを目の前で失った子どもたちの心が崩壊してしまう危険性は、想像に難くない。死者や負傷者の数は把握できても、心に深い傷を負った子どもたちの正確な数を知ることは困難だろう。先のNBCの報道では、攻撃で怪我を負ったある子どもの身体的な傷は軽くても、精神的な症状が劣悪であったとする医師のコメントが紹介されている。
2007年から続くイスラエルによる封鎖で移動の自由が奪われ、経済的な困難があったとしても、子どもたちは10月のイスラエル軍によるガザへの大規模な報復攻撃まで、何とか日々を暮らしていた。その生活が、突然破壊された。自らも常に生命の危険にさらされ、最愛の人たちを目の前で何十人も亡くす光景を毎日のように目の当たりにさせられている。そのうえ、食料や水、医療もまともに受けられない。こうしたガザの子どもたちに対し、正気を保てという方が無茶な注文だろう。