日本郵船運航の船がフーシ派に乗っ取られる

 更に、中東以外の他地域へのテロの危険性を高めるという意味で、イスラエルの強硬な姿勢は、欧米を始めとする世界に対する大迷惑行為とも言えるだろう。2001年、米国で起きた同時多発テロでは日本人が24人も犠牲になった。今後ビジネスなどで欧米を訪れる日本人や、在外邦人も危険にさらしかねないという意味でも、日本が全く無関係だとは言えない。

 19日には日本郵船が運航する船が紅海南部で、イエメンの反政府武装組織フーシ派に乗っ取られたとの発表があった。BBCの報道では、同組織がかねてより、イスラエル船舶を「ハイジャックする」と宣言していたという*11

*11イエメン・フーシ派が貨物船を拿捕、イスラエルは自国船ではないと 日本郵船が運航(BBC NEWS JAPAN)

 日本政府としても、イスラエルを支持する米国に忖度することなく、即時停戦を強く呼びかけ続けるべきだ。

 筆者は2010年、イスラエルのエルサレムにあるホロコースト記念館を訪れたことがある。ユダヤの人たちに対するナチスの虐殺は、人類史上最悪の犯罪行為の一つであり、決して繰り返されてはならない悲劇だ。だが、ホロコーストを盾に、パレスチナの人たちの人権を侵害し、自衛を理由に子どもたちに攻撃を加え続けるような姿勢には、いち日本人として全く共感できない。

 ホロコースト記念館と同じく、戦争の悲劇を伝え続ける広島の平和記念公園の記念碑にある「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」という言葉を、イスラエルには今こそ胸に刻んで欲しいと切望する。

 ナチスの蛮行により亡くなった数多くの罪なきユダヤの人たちは、今行われているガザの子どもたちに対する攻撃を、正当なものだと感じているだろうか。

 筆者は唯一の被爆国である日本国民として、広島と長崎が「あやまちを二度と繰り返さない」と戦後78年たった今もなお、毎年繰り返し世界に発する平和宣言に、誇りを持っている。暴力を受けたから、その何十倍もの軍事力を持って報復しても良いという思考では、永遠に中東問題が解決する日は来ないだろう。