神戸市の理化学研究所計算科学研究センターにあるスーパーコンピューター「富岳」神戸市の理化学研究所計算科学研究センターにあるスーパーコンピューター「富岳」(写真:共同通信社)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

チャットGPTの16倍のテキストを処理する中国の生成AI

[ロンドン発]中国の人工知能(AI)スタートアップ、Lingyi Wanwuが11月7日に発表した大規模言語モデル(LLM)の「Yi-34B」は約40万字の漢字を含むテキストの入力に対応できるという。世界中で旋風を巻き起こしている米オープンAIの生成AI「Chat(チャット)GPT」が処理できるのは約2万5000単語だ。単純計算すると16分の1だ。

 中国のAIスタートアップ、Baichuanの「Baichuan2-192k」は最大35万字の漢字を処理でき、別のAIスタートアップ、Moonshot AIは最大20万字の漢字に対応する「Kimi Chat」を発表している。コンテキストウィンドウの容量は日進月歩の勢いで増えており、これまで報告されている中ではBaichuanのモデルが最大だった。

 しかしスーパーコンピューターは少し事情が異なる。スパコンの計算速度を競うトップ500で米オークリッジ国立研究所の「フロンティア」が1秒間に119京回(京は1兆の1万倍)の計算性能を示し、昨年6月から4期連続で首位に輝いた。理化学研究所と富士通が開発した「富岳(ふがく)」(1秒間の計算性能は44京回)は2位から4位に後退した。

 スパコンはフロンティアの登場で毎秒100京回以上の計算が可能な「エクサ級」時代に突入している。2位は米アルゴンヌ国立研究所の「オーロラ」(同59京回)、3位は米マイクロソフトの「イーグル」(同56京回)。米国勢はトップ10の6つを占める。