逆襲はせいぜい傷害程度に留めたほうがいいと思うが、たとえ加害者を殺したとしても、それでも被害者の味方である。

 今回の歌舞伎町事件の場合、大騒動の割には、使用されたのがカッターナイフということで、男の被害は軽かったようだ。男はその晩、早くもライブ配信アプリを使って、「元気そうな様子」で配信してたという。全然懲りてないバカ野郎である。

 女はさぞ残念だったろう。指の2、3本切り落とすか、鼻を潰すか、もうすこし痛めつけてもよかった。

 それでも女にとっては、かえってよかったかもしれない。そんな軽度の傷害なら、情状酌量され、たぶん執行猶予がつくだろうから。

 わたしは、へんないい方だが、この女に多少同情的である。

 彼女がどんな女だったのか、まったくわからない。しかし、半年でほんとうに1800万円貢いだかどうかは知らないが(たぶん本当だろう)、それがバカだったということに気づかなければならない。こんな男に入れあげたということが、最初のバカの一歩だったのだ。

 彼女も一度はまともに生きようとした時期があったはずである。この女には、自分の人生に絶望した苦しみが感じられる。しかし絶望のはるか以前には、希望があったはずである。

「かけ子」で捕まった20代の男のなかにも、おれは悪い夢でも見ていたのではないか、と反省しているものがいるかもしれない。

 女も男もまだ20代。心を入れ替え、やりなおしてもらいたいと思う。今後はまともに生きるように。

「もっと頑張れたとでも? 絶対に無理だ」

 韓国のテレビドラマに「刑務所のルールブック」というのがある。その16話が感動的である。

 韓国野球界で最高の抑え投手として評価の高いキム・ジヒョクは、妹を襲った暴漢を打ちのめし、結果、男は脳死状態になる。その罪でジヒョクは刑務所に入る。

 囚人たちや刑務官たちのさまざまな人間関係のなかを、ジヒョクは持ち前の正義感で生き抜いていく。最初、主役のパク・ヘスがあまり魅力的ではないな、と思ったが、ドラマの作り方が秀逸で、徐々におもしろくなっていくのだ。

 刑務所のなかで出会った囚人のキム・ミンソン青年は、勤労学生だった。公務員試験を受けるためにひたすら7年間勉強した。

 そのうえ上京した妹の面倒もみるため、キム青年は建設会社の宿所に泊まりこんで、半年ほど肉体労働をしていた。5時間しか眠らず、仕事に打ち込んだ。

 数か月たったある深夜、社長から財布を届けに会社のトラックで来いといわれる。キム青年は、その途中、睡眠不足で交通事故を起こしてしまったのだ。