警察の依頼により、数々の変死体の死因糾明にあたっている千葉大学大学院医学研究院法医学教室の岩瀬博太郎教授は、これまでに何冊もの著書を出し、法医学ドラマやコミックの監修も務めるなど、この分野の第一人者である。その岩瀬教授が先月、子ども向けに法医学を解説した本を出版した。法医学の専門家といえば、変死体を解剖したり、悲惨な事件や事故の被害者の遺体と向き合ったりしなければならない立場にある。そのような仕事をなぜ子ども向けに解説しようと思い至ったのか。ジャーナリスト・柳原三佳氏が岩瀬教授に話を聞いた。(JBpress編集部)
(柳原 三佳・ノンフィクション作家)
法医学は「国家医学」
――10月10日、『親子でなっとく 事件をかいぼう! こども法医学』という本を出版されました。岩瀬先生をモデルにした「ドクターいわせ」と、畑で見つかった人骨の「ボーンくん」というキャラクターのかけ合いが面白く、楽しく読ませていただきました。
岩瀬博太郎氏(以下、岩瀬) ありがとうございます。
――子ども向けに読みやすく構成されていますが、かなり専門的な内容でもありますね。普段はうかがい知ることのできない法医学に関する基礎知識、日本と海外の制度の違いや歴史、また法医学者が事件解決に向け、日ごろどのような活動をしているのかなど、さまざまな事例を通して知ることができました。「もしも人間を2つに切ったら?」なんていう見出しにはドキッとしましたが、子ども向けの法医学本は国内でも初めての試みではないでしょうか。
岩瀬 そうかもしれませんね。子どもには少々難しいと思いますが、法医学に関心のある親がこの本を手にとり、子どもたちと一緒に読んでもらえればうれしいなと思っています。