自然豊かで多民族が暮らす地域
村の小さな対立がやがて深刻な紛争へと発展していく社会派サスペンス『ヨーロッパ新世紀』。舞台となるのはルーマニア中部のトランシルヴァニア地方のとある村。
トランシルヴァニアと聞くと、やはり思い浮かぶのは「吸血鬼ドラキュラ」。ルーマニアは豊かな自然に恵まれ、数多くの世界遺産や歴史的建造物で知られる。いつか行ってみたい。映画はそんな妄想を一気に打ち砕く。
山脈に囲まれた、ヨーロッパ有数の野生動物の生息地であり、古くからの伝統行事が受け継がれているトランシルヴァニア地方。村にはルーマニア人とハンガリー人、そして少数のドイツ人やロマの人々が暮らしており、ルーマニア語、ハンガリー語、ドイツ語、英語、フランス語が飛び交う。
台詞の字幕もルーマニア語は白、ハンガリー語は黄色、その他のドイツ語、英語、フランス語はピンクに色分けされているという見たこともない複雑さだ。
クリスマス直前、村出身のマティアスは働き先のドイツの食肉工場で暴力沙汰を起こし、村に舞い戻る。村は鉱山が閉鎖されて以来、活気がなく、多くの働き手はより良い報酬を求め、マティアスのように西ヨーロッパの先進国に出稼ぎに出ていた。