昨年7月、ウクライナのオレクシイ・レズニコフ国防相(当時)はこう語っている。

「ウクライナの防空システムは完璧ではないが、かなり多くのミサイルを撃ち落としている。イスラエルのアイアン・ドームでも100%防御できない。基本的にガレージで作られる低速、低高度のミサイルから守るために作られており、ロシアの巡航、弾道ミサイルは防げない」

テルアビブやエルサレムなどイスラエルの主要都市を射程に収める

 ハマスのロケット弾はイランの援助と利用可能な技術のリバース・エンジニアリングによって開発され、テルアビブやエルサレムなどイスラエルの主要都市を射程に収めている。160キロメートルと射程が最も長い「R-160」はイスラエルの大部分に届く。しかしロケット弾の精度は限定的でイスラエル社会を混乱に陥れ、恐怖を植え付けることに主眼が置かれる。

 それにしても、なぜハイテクのイスラエルはローテクのハマスに不意をつかれたのか。「数十年の間に世界有数の軍隊と一流の情報機関を誇る技術大国となったにもかかわらず、イスラエル国防軍は油断していた。世界で最も貧しい飛び地のテロリスト集団がなぜこのような破壊的な攻撃を仕掛けることができたのか」と米CNNは問いかけている。

 05年にイスラエルがガザから撤退して以来、イスラエルは何十億ドルも費やして国境を守ってきた。「これはイスラエルにとって真珠湾攻撃のような瞬間だ」(元イスラエル国防軍関係者)。「真珠湾攻撃、第四次中東戦争など軍事史には常に驚きがある。結局、これがインテリジェンスの限界なのだ」(ナフタリ・ベネット元イスラエル首相)。