(国際ジャーナリスト・木村正人)
男性支配の現実が完全に逆転した空想世界
[ロンドン発]バービー役のマーゴット・ロビー、ケン役のライアン・ゴズリングがコミカルにフェミニズムを問いかける米映画『バービー』にロシアのウラジーミル・プーチン大統領と文化省が神経を尖らせている。ウクライナ戦争が長期化する中、西洋的価値観を排斥し、プーチンの望む伝統的価値観を徹底させ、ロシアの軍国化を進めたいとの思惑がある。
男性支配の現実社会が完全に逆転したピンク一色の空想世界では複数のバービーとケンが暮らす。大統領から裁判官、科学者、ジャーナリストまですべての要職はバービーが担い、ケンはバービーなしでは生きていけない従属物に過ぎない。自我に目覚めた1人のバービーと車に忍び込んだ能天気なケンが現実社会に旅したところから複雑な波紋が広がり始める。
米紙ロサンゼルス・タイムズ(9月12日付電子版)のまとめによると、『バービー』の興行収入は日米合作映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を抜いて13億6000万ドルを記録。今年、米国と世界で最も稼いだ映画になった。ストリーミングサービスでの公開も米国内で6億2000万ドル、世界で14億ドルを売り上げた。
封切りされた最初の週末の興行収入は「原爆の父」米物理学者ロバート・オッペンハイマーの生涯を追ったクリストファー・ノーラン監督の米映画『オッペンハイマー』の約2倍。『バービー』は『レディ・バード』や『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』の米女性グレタ・ガーウィグ監督が100%女性の目線と感性で作ったコメディー作品だ。